top of page
All News


『聚芳図説』が語る江戸の華:花卉・園芸文化に息づく美と知の探求
日本の四季が織りなす豊かな自然は、古くから人々の心に深く寄り添い、生活に彩りを加えてきました。花々は単にその美しさゆえに愛でられるだけでなく、そこには深い精神性や知的な探求が息づく、独自の文化が育まれてきました。江戸時代に生み出された一冊の植物図譜、『聚芳図説』(じゅほうずせつ)は、当時の人々の花への情熱、そして自然と向き合う真摯な姿勢を現代に伝える貴重な資料です。
2024年11月24日


白に宿る生命の輝き:斎藤兼光が遺した『一白花譜』の深遠なる世界
『一白花譜』は、寛文12年(1672)に生まれ、享保19年(1734)に没した本草学者、斎藤兼光によって編纂された植物図譜です。この図譜の最大の特徴は、描かれた植物がすべて「白い花」であるという点にあります。当時の植物図譜が、多種多様な植物を網羅的に記録することを主眼としていたのに対し、『一白花譜』は、特定の色彩、すなわち「白」に焦点を絞り、その多様な表情を克明に描き出しています。
2024年11月22日


江戸時代後期に刊行された、鉢植え・盆栽などの園芸指南書:金生樹譜
本稿では、江戸時代後期に刊行された稀代の園芸指南書、『金生樹譜(きんせいじゅふ)』に焦点を当てます。長生舎主人、すなわち栗原信充(くりはらのぶみつ)によって著されたこの図譜は、当時の園芸文化の精髄と、そこに込められた深遠な哲学を現代に伝える貴重な遺産であり、日本の花卉・園芸文化を深く理解するための道標となるでしょう。この古き書物が、いかにして江戸の人々の心を捉え、現代に生きる私たちに何を語りかけるのか、その魅力を探求いたします。
2024年10月20日


『非水百花譜』が織りなす美の世界:杉浦非水が描いた花卉文化の真髄
日本の四季折々の美しさを彩る花々。古くから、日本人は花に特別な感情を抱き、その姿に人生の機微や哲学を見出してきました。庭園、生け花、そして様々な芸術作品に息づく花卉文化は、私たちの心に深く響く日本の伝統そのものです。この豊かな文化の中で、明治から昭和にかけて活躍した一人の芸術家がいます。その名は杉浦非水。彼は、日本のグラフィックデザインの黎明期を築き、西洋のモダンな感性と日本の伝統美を融合させた独自のスタイルを確立しました。
2024年9月22日


朝、鮮やかな珍しい花の朝顔集:朝鮮珍花蕣集
一輪の朝顔に、どれほどの歴史と情熱が込められているか、想像したことはあるでしょうか。朝に咲き、昼にはその姿を閉じる朝顔の儚い美しさは、古くから日本人の心を捉えてきました。しかし、その刹那の輝きの中に、人々は不朽の遺産を見出し、それを形として残そうとする強い衝動を抱いていたのです。これは、無常の中に美を見出す日本の伝統的な美意識、すなわち「もののあわれ」に通じるものでありながら、同時にその美を永遠に留めようとする創造的な営みでもありました。
2024年9月22日


『扶桑百菊譜』に秘められた江戸の美意識と菊への情熱
日本の秋を彩る花といえば、何を思い浮かべるでしょうか。多くの人が、その高貴な姿で私たちを魅了する「菊」を挙げることでしょう。しかし、この菊が、単なる美しい花としてだけでなく、江戸時代の人々の生活と精神に深く根ざし、独自の文化を育んできたことをご存知でしょうか。
2024年9月22日


季節感が豊かに表現されている花鳥画:景年花鳥画譜
日本の四季が織りなす豊かな自然は、古くから私たちの心に深く響き、独自の文化と美意識を育んできました。一輪の花、一羽の鳥にも、その生命の輝きや移ろいの中に、深い物語や哲学を見出すのが日本人です。この繊細な感性が凝縮された芸術の一つが「花鳥画」であり、その中でも特に異彩を放つのが、近代日本画壇の巨匠・今尾景年が手掛けた『景年花鳥画譜』です。
2024年7月21日


江戸の奇跡、刹那の美を映す『朝かがみ』:変化朝顔に宿る日本人の精神性
朝露に濡れ、一瞬の輝きを放つ花々。そのはかなくも美しい姿を永遠に留めたいと願う心は、いつの時代も人々を魅了してきました。特に日本の花卉/園芸文化においては、その願いが独自の形で昇華され、驚くべき美の世界を創り出しました。江戸時代に隆盛を極めた「変化朝顔」は、まさにその象徴であり、予測不能な突然変異によって生まれる唯一無二の姿は、当時の人々の心を熱狂させました。この独特な美意識と、それを後世に伝えようとする情熱が凝縮された一冊が、文久元年(1861)に刊行された図譜『朝かがみ』です。
2024年7月1日


幕末期に渡来した植物の図譜:新渡花葉図譜
本稿では、江戸時代中期に尾張藩士・渡辺又日菴によって描かれた稀有な植物図譜、『新渡花葉図譜』に光を当てます。この画譜は、当時の人々の植物への深い眼差し、知的好奇心、そして卓越した写実表現が融合した、まさに「植物の肖像」と呼べるものです。
2024年6月20日


「竹譜」に息づく日本の心:武蔵石寿が描いた竹の美と哲学
日本庭園に響く風の音、茶室に飾られた花入れ、そして食卓を彩る旬の筍料理。私たちの暮らしのいたるところに、竹は静かに、しかし確かに息づいています。このしなやかで力強い植物は、単なる素材を超え、古くから日本人の精神性や美意識と深く結びついてきました。なぜ、これほどまでに日本人は竹に魅せられるのでしょうか?
2024年6月9日


木版多色の美しい図が挿入された栽培手引書:花壇朝顔通
『花壇朝顔通』は、江戸時代後期に刊行された、朝顔の多様な品種を図と文章で詳細に解説した図譜です。この書物は単なる植物図鑑の域を超え、当時の朝顔栽培における専門知識、鑑賞の基準、そして美意識が凝縮された、まさに「朝顔愛好家のバイブル」ともいうべき内容となっています。
2024年6月8日


日光に自生する植物の図譜:日光山草木之図
『日光山草木之図』は、江戸時代後期の本草学者である岩崎灌園によって描かれた、日光に自生する植物の図譜です。この図譜は7巻・目録1巻から構成され、127品目の植物画が収録されています。各植物画には、植物の形態や花の色に加え、採取場所などの詳細な情報が記録されており、灌園自身や他の採集家によって日光で採取された植物を写生し、解説を加えたものです。
2024年5月25日


江戸の粋と自然への眼差し:旗本・水野忠暁が遺した『草木錦葉集』の魅力
私たちは、植物のどこに美を見出すのでしょうか?均整の取れた完璧な姿でしょうか、それとも予期せぬ変化の中に、より深い魅力を感じるのでしょうか?日本の花卉/園芸文化は、単なる趣味の領域を超え、豊かな歴史と奥深い精神性を内包しています。特に江戸時代は、将軍から庶民に至るまで、あらゆる階層の人々が草花を愛で、その多様性を追求する園芸文化が隆盛を極めた時代でした。この時代には、単に美しい花を鑑賞するだけでなく、個性的な品種や、変わった色、形、そして「斑(ふ)」と呼ばれる模様を持つ植物に特別な価値を見出す、独自の美意識が育まれました。
2024年5月23日


花開く百の麗姿:永斎筆『花菖蒲図譜』が誘う、江戸園芸文化の深奥
初夏の水辺に、凛として咲き誇る花菖蒲。その優美な姿は、古くから多くの日本人を魅了し、詩歌や絵画の題材となってきました。しかし、この花の背後には、単なる美しさだけではない、日本の豊かな文化と精神性が息づいていることをご存知でしょうか。
本記事では、永斎筆『花菖蒲図譜』を紐解きながら、日本の花卉/園芸文化が育んできた美意識と、花菖蒲に込められた深い意味を探求します。この図譜は、作者や制作時期に多くの謎を秘めながらも、その作者が江戸時代後期の著名な本草学者・画家である坂本浩雪(永斎)である可能性が指摘されており、私たちに江戸時代の園芸文化の熱気と、花を愛する人々の情熱を鮮やかに伝えてくれます
2024年5月12日


江戸の知と美の結晶:本草書『花彙』が織りなす日本の花卉/園芸文化
『花彙』は、宝暦9年(1759)から明和2年(1765)にかけて京都の文昌閣から刊行された、全8巻からなる大規模な植物図集です。草編4巻、木編4巻で構成され、当時の日本で知られていた多種多様な植物が網羅されています。
2024年5月5日


江戸の知の宝庫:中村惕斎が編纂した『訓蒙図彙』が拓く、日本の植物文化の深淵
もし、江戸時代の人々が、現代の私たちと同じように、身の回りのあらゆるものを図鑑で学び、知識を深めていたとしたら、あなたは驚かれるでしょうか?当時の人々が、自然の神秘から日用品の機能、さらには遠い国の風俗まで、あらゆる事象を体系的に理解しようと努めていたとすれば、その知的好奇心の深さに心を揺さぶられるかもしれません。今回ご紹介する『訓蒙図彙(きんもうずい)』は、まさにそのような江戸の人々の知への渇望に応え、文化の発展に大きく貢献した稀有な書物です。単なる図鑑の枠を超え、当時の人々の自然への敬意や知的な探求心、そして日本の花卉・園芸文化の発展にどのように寄与したのか、その深淵を紐解いていきましょう。
2024年5月5日


『花菖蒲図譜』に息づく日本の美意識:近代植物学と伝統園芸文化の融合
『花菖蒲図譜』は、明治時代から大正時代にかけて、日本の花菖蒲の多様な品種を精緻な植物画と詳細な解説で記録した、学術的かつ芸術的価値の高い図譜です。この図譜は、単に花菖蒲の姿を写し取ったものではありません。各品種の形態的特徴、色彩、斑の入り方、草丈、開花時期といった詳細な情報が、植物学的な正確さをもって描かれ、記述されています。これは、失われゆく花菖蒲の品種を後世に伝えるための貴重な資料として編纂されたものです。
2024年5月4日


明治31年刊行 芍薬の名品図譜:『芍薬花譜』
『芍薬花譜』は、明治31年(1898)に刊行された、芍薬の多様な品種を精緻な彩色木版画で描いた貴重な植物図譜です。この図譜は、当時の人々の芍薬に対する高い関心と、明治期における園芸技術の発展を示す資料として、単なる植物学的な記録に留まらず、芸術作品としても高く評価されています。
2024年5月3日


三代歌川豊国と初代歌川広重による合作の役者絵:当盛六花撰
「当盛六花撰」は、安政元年(1854)に版元・錦昇堂から出版された、全六図からなる浮世絵のシリーズです。この作品の最大の特徴は、歌舞伎役者の姿を専門とする三代歌川豊国が人物を描き、風景画の大家である初代歌川広重が背景の花々を描くという、二人の巨匠による「合作」である点にあります。
2024年4月28日


花鳥画に息づく日本の心:幸野楳嶺が描いた自然への讃歌と花卉/園芸文化の美
幸野楳嶺は、天保13年(1842)に京都の商家の息子として生を受けました。幼い頃から絵画に才能を示し、京都画壇の伝統的な四条派の画家である中島来章に師事し、後に山水画の大家である塩川文麟からも学びました。この京都の伝統的な絵画の素養が、彼の芸術の基盤を形成しました。
2024年4月17日


現在のクローバーの渡来事情と和名シロツメクサ(白詰草)の由来の記述:竹園草木図譜
『竹園草木図譜』は、江戸時代後期の幕臣であった貴志忠美によって著された、肉筆による植物図譜です。この図譜には、忠美自身が直接観察し、写生した植物が、その形態、特徴、名称などと共に詳細に記録されています。これは、単に既存の文献を編纂したものではなく、著者自身の経験的知識と観察眼に基づいた一次資料としての性格を強く有していることを示唆しています。
2024年4月16日


花と知の探求:幕末の博物学者、貴志忠美が描いた「本草寫生」の世界
本草寫生には、当時珍しかった植物の観察記録が含まれています。特に注目すべき点は、オクラの栽培に関する記述です。写生帳には「安政元年(1854年)に江戸から送られてきた魯西亜豆(おろしやまめ)を蒔いたら、トロロアオイに似た花が咲き、トウガラシのような実が成った」という記録があります
2024年4月16日


江戸琳派の粋と自然への眼差し:酒井抱一が遺した『鶯邨畫譜』の魅力
『鶯邨畫譜』は、酒井抱一が自ら手掛け、生前に唯一刊行した自身の絵手本、すなわち画譜です。書名の「鶯邨(おうそん)」は、抱一が49歳で移り住んだ根岸が鶯で有名だったことに由来する彼の俳号であり、晩年の抱一の自然への親しみを象徴しています。
2024年4月16日


日本の美意識を纏う:芸艸堂が紡いだ着物デザイン集『彩美』
『彩美』は、大正7年(1918)から大正9年(1920)にかけて、京都の老舗美術書出版社である芸艸堂から刊行された着物のデザイン図版集です。その名の通り、「彩美」とは日本語で「美しい色彩」を意味します。この名称は、図版集に収録されたデザインが持つ色鮮やかさ、洗練された美しさ、豊かな表情、そして造形的な美しさを象徴しています。
2024年4月16日
bottom of page