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『作庭記』に息づく平安の庭:橘俊綱が紡いだ自然の美学
橘俊綱(1028-1094)は、平安時代中期から後期に活躍した重要な人物です。俊綱は官人、歌人としての顔を持つ一方で、日本庭園史において極めて大きな足跡を残しました。『作庭記』は、まとまった作庭書としては世界最古のものとされており、平安時代後期の11世紀後半に成立したと見られています。この書は、寝殿造の庭園に関する意匠と施工法を記しており、絵図を一切用いずすべて文章で記されている点が特徴です。その内容は、後の日本庭園の発展に決定的な影響を与え、日本庭園の根本理念が記されていると評価されています。
5月29日


恠恠奇奇、金碧の輝き:狩野永徳最晩年の傑作《檜図屏風》
狩野永徳筆《檜図屏風》は、安土桃山時代(1543-1590)を代表する稀代の絵師、狩野永徳の最晩年に制作された傑作であり、日本の国宝に指定されている重要な文化財です。この作品は、桃山時代の豪壮かつ華麗な文化を象徴する金碧障壁画の最高峰の一つとして、日本美術史において確固たる地位を築いています。
5月28日


武蔵野図屏風:月の入るべき峰もなし、武蔵野の詩情
「武蔵野図屏風」は、日本の絵画、特に江戸時代(1615年~1868年)において顕著な位置を占める画題であり、その表現は多岐にわたります。これらの屏風は、広大で詩的な連想に富む武蔵野の秋の情景を描写するのが一般的です。かつては野趣あふれる広野であった武蔵野は、現在では東京北部を中心とした人口密集地となっています。しかし、その地名は古典文学において古くから詩的な場所、すなわち「歌枕」として重要な意味を持ち続けてきました。例えば、『万葉集』や『伊勢物語』にもその名が見え、広大な草むらが広がっていたと想像されます。
5月27日


幕末・明治期の博物学者田中芳男の植物学への貢献:近代日本の農業と博物学の礎を築いた生涯
田中芳男(1838-1916)は、幕末から明治、大正という激動の時代に活躍した傑出した博物学者であり、日本の近代化に多方面から貢献した人物である。信濃国(現在の長野県)飯田に生まれ、79歳でその生涯を閉じた。広く「日本の博物館の父」として知られる田中であるが、本稿では田中芳男の多岐にわたる功績の中でも、特に植物学への貢献に焦点を当て、その詳細を深く掘り下げる。
5月26日


「植物文学」の提唱者、松田修:古典に息づく草木の物語
松田修は1903年6月28日に山形県で生を受けました。氏の学術的基盤は、1928年に卒業した東京帝国大学農学部で築かれました。この農学部での学びは、彼が後に文学と植物学を融合させた「植物文学」という分野を開拓する上で、不可欠な専門知識と科学的視点を提供しました。
5月25日


臥して見つめし草木:正岡子規
正岡子規(1867-1902)は、俳句と短歌の近代化に多大な功績を残した、明治時代を代表する文学者の一人です。子規は俳誌「ホトトギス」を指導し、高浜虚子や河東碧梧桐、伊藤左千夫といった多くの優れた門下生を輩出し、その後の近代文学に計り知れない影響を与えました 。本稿の目的は、この文学の巨匠、正岡子規の生涯における植物や園芸との多角的かつ深遠な関係性を包括的に分析することにあります。この関係性は、単なる個人的な嗜好に留まらず、彼の文学理念「写生」の形成、病床での創作活動、そして死生観の表出に不可欠な要素であったことが明らかになります。特に、彼子規が脊椎カリエスという重篤な病に苦しみながらも、外界との接点が制限される中で、いかに植物への視点を研ぎ澄ませ、独自の文学世界を築き上げたかを詳細に探求します。
5月25日


屏風に咲く墨の詩:鶴亭「花木図押絵貼屏風」に宿る禅と写実の美 参考図・伊藤若冲「花鳥図押絵貼屏風」
「花木図押絵貼屏風」は、鶴亭(かくてい・1722-1785)の筆による絵画作品です 。江戸時代中期の明和4年(1767)に制作されたとされており 、これは鶴亭の活動時期の中期に位置する作品です 。技法は紙本墨画、すなわち水墨画による押絵貼屏風であり 、各扇に個別の水墨画が描かれ、それらが屏風の台紙に貼り付けられています。寸法は各図が縦133.0cm、横50.5cmで、六曲一双の形式で構成されており、合計12面の絵が連なります 。この貴重な作品は九州国立博物館に所蔵されています 。
5月24日


本阿弥光悦:古今和歌集忍草下絵和歌断簡
本阿弥光悦は、桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した、日本美術史における極めて重要な多才な芸術家です。彼の貢献は書道、陶芸、漆芸、出版、工芸と多岐にわたり、後世の日本文化に計り知れない影響を与えました。特に、絵師の俵屋宗達とともに「琳派」の祖として広く認識されています。光悦は単に個々の作品を制作するだけでなく、現代でいう「アートディレクター」のような役割も果たし、京都に芸術村を築き、様々な分野の芸術家たちを束ねて作品制作を指揮しました。この組織的な役割は、彼の芸術家としての貢献を一層際立たせています。
5月24日


奇想の筆、霊峰を舞う:曽我蕭白と三保松原の幻想
我蕭白(享保15年/1730年 - 天明元年/1781年)は、江戸時代中期に活躍した日本絵師であり、自ら「蛇足軒」と号しました。彼はその観る者を驚かせる強烈な画風から、「奇想の絵師」と評されることが多い存在です。同時代の京都で写実的で万人受けする画風で人気を博した円山応挙とは対照的に、蕭白は自身の強烈な個性を貫きました。彼の作品は賛否両論を巻き起こしましたが、その独創性ゆえに熱心な支持者の心を掴みました。これは、当時の京都が文化的に成熟し、多様な芸術表現を受け入れる土壌があったことを示唆しています。
5月23日


毛利梅園:梅園画譜に息づく生命、江戸本草学の光芒
毛利梅園は、江戸時代後期の旗本であり、本草学者として知られています。彼の本名は元寿で、寛政10年(1798年)に生まれ、嘉永4年(1851年)に亡くなりました。
5月23日


「個」の探求者・鈴木其一:朝顔、菖蒲、芥子
鈴木其一(すずききいつ、1796-1858)は江戸時代後期に活躍した江戸琳派の代表的画家であり、酒井抱一の実質的な後継者として知られています。江戸琳派の優美な画風を基盤としながらも、独創的で斬新な作品を多数生み出し、幕末から明治にかけての琳派様式の発展に大きく貢献しました。その大胆な構図と鮮やかな色彩表現は、後世にも高く評価されています。
5月22日


海を渡った日本の美:メトロポリタン美術館の尾形光琳『八橋図屏風』
メトロポリタン美術館が所蔵する八橋図屏風は、江戸時代に活躍した日本の画家、尾形光琳の代表作です。本作品は、日本の古典文学『伊勢物語』に由来する「八橋」の主題を、琳派様式特有の装飾性と大胆な構図で表現した、江戸時代絵画の金字塔とされています。
5月22日


空中斎、季節を織りなす:藤・牡丹・楓図にみる琳派の息吹
本阿弥光甫(ほんあみ こうほ)による三幅対「藤・牡丹・楓図」は、江戸時代初期の日本の花鳥画を代表する傑作の一つであり、作者の洗練された美意識と卓越した技術を如実に示しています。本作は、春の藤、夏の牡丹、秋の楓という、それぞれの季節を象徴する花木を三つの掛軸に描き分けたものであり、東京国立博物館に所蔵されています 。
5月17日


人の一生を山登りに例えた鎌倉時代の作品:おいのさか図
東京国立博物館所蔵の「おいのさか図」は、人間の一生を山の登り降りに例えた珍しい絵画作品です。鎌倉時代(14世紀)に制作されたこの作品は、誕生から死までの人生の旅路を四季の移り変わりとともに描き出し、人生の無常観と四季の変化を重ね合わせた日本美術の代表的作例として貴重な存在となっています。紙本着色で描かれたこの縦長の作品は、日本の伝統的な「老いの坂」の概念を視覚的に表現した稀少な作例であり、日本の中世における人生観と時間認識の理解に重要な手がかりを提供しています。
5月17日


伝説と芸術に息づく日本の蔓草:定家葛
テイカカズラ(定家葛、学名:Trachelospermum asiaticum)は、日本の本州、四国、九州、そして朝鮮半島を原産とするキョウチクトウ科の常緑つる性木本植物です。初夏(5月から6月)に、甘い芳香を放つ白い花を咲かせ、咲き進むにつれてクリーム色へと変化します。
5月3日


万葉の香、庭先の陰:馬酔木
アセビ(学名:Pierisjaponica)は、ツツジ科アセビ属に分類される常緑性の低木で、日本の固有種とされています。宮城県以南の本州、四国、九州の山地に自生するほか、庭木や公園樹としても広く植えられています。 顕著な特徴の一つは、早春、多くは2月から4月にかけて開花する、白や淡いピンク色の小さな花です。
4月23日


富貴の譜:牡丹が彩る日本の文化譚
牡丹は中国北西部を原産地とするボタン科の落葉低木です。中国においては、古くから薬用植物としての価値が高く評価され、紀元500年頃に成立したとされる『神農本草経』にも薬草として記載されています。特にその根の皮(牡丹皮)は、漢方薬として様々な病の治療に用いられました。
4月23日


柳揺れる黄金の橋:柳橋水車図屏風
東京国立博物館が所蔵する「柳橋水車図屏風」(りゅうきょうすいしゃずびょうぶ)は、日本の美術史上、特に文化的な活気に満ちた安土桃山時代から江戸時代初期(16世紀末~17世紀初頭)にかけて制作された、視覚的に強烈な印象を与える代表的な屏風絵の一つです。六曲一双の大画面全体に広がる金色の背景、斜めに大胆に横切る太鼓橋、そして自然物と人工物が織りなす構成は、観る者を一瞬にして豪華絢爛でありながらどこか謎めいた世界へと誘います。この屏風は重要美術品に指定されており、その芸術的価値と歴史的重要性が公に認められています。
4月13日


筆と庭と祭りと:日本の躑躅を巡る物語
ツツジ属(Rhododendron)に属する躑躅は、春から初夏にかけて日本の街や庭園を彩る、ひときわ目を引く花木です。その鮮やかな色彩と多様な形態は、古来より日本人の心を捉え、単なる美しい植物としてだけでなく、文化、芸術、そして精神生活の様々な側面に深く根付いてきました。
3月29日


土を肥やし、心を潤す:蓮華草の文化誌
レンゲソウ、あるいはゲンゲとも呼ばれるこの植物は、春の訪れとともに、日本の各地でその紫紅色の花を咲かせます。特に水田地帯では、その一面に広がる様子が、まるで紫の絨毯を敷き詰めたように見えることから、古くから日本人の心を捉えてきました。
3月29日
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