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植物図譜
植物図譜(しょくぶつずふ)とは、様々な植物を写真や写生画などの図と説明文によって解説した書籍です。学術的な研究資料としてだけでなく、美術品としての美しさも兼ね備え、鑑賞の対象としても親しまれています。植物の分類・同定、多様性理解、植物学研究の基礎資料、知識普及など、多岐にわたる重要な役割を担っています。


毛利梅園:梅園画譜に息づく生命、江戸本草学の光芒
毛利梅園は、江戸時代後期の旗本であり、本草学者として知られています。彼の本名は元寿で、寛政10年(1798年)に生まれ、嘉永4年(1851年)に亡くなりました。
5月23日


岡村尚謙「桂園橘譜」の世界:江戸の柑橘
岡村尚謙とその著作『桂園橘譜』は、日本の本草学史、特に柑橘類研究において重要な位置を占めています 。本書の最も特筆すべき点は、温州みかんに関する詳細かつ正確な写生図を伴う最初の文献であることです 。嘉永元年(1848)に成立したこの著作は 、江戸時代における日本の柑橘類の多様性とその理解の一端を今日に伝えています。
2月9日


長楽花譜:江戸時代の雪割草図鑑の魅力
江戸後期、雪割草は京や江戸で大変な人気を博していました。この図譜は、当時の園芸文化における雪割草の重要性を示す貴重な資料となっています。特に興味深いのは、描かれた変異株の多様性で、花の色や形の豊かな変化が詳細に記録されています。
2月4日


飯沼慾斎の『草木図説』:近代日本植物学の礎石
飯沼慾斎の著作『草木図説』は、日本の植物学史における画期的な出来事であり、伝統的な日中本草学から、西洋の影響を受けた近代的な科学的植物学への重要な転換点を示すものです。この著作は、日本初の近代的植物図鑑と広く認識されています。本稿では、この記念碑的著作の著者である飯沼慾斎の生涯と学問的背景を概観し、『草木図説』の歴史的文脈、革新的な方法論、同時代の著作との比較、そして日本の植物科学の発展における永続的な遺産について詳細な分析を行います。江戸時代は本草学が隆盛を極めましたが、『草木図説』は、この伝統と、特にリンネ分類法を中心とする新たな西洋植物学とを独自に融合させた著作として際立っています。
1月3日


江戸時代の幕臣が描いた薬草類の写生画集:庶物類纂図翼
『庶物類纂図翼』は、江戸時代中期の幕臣、戸田要人(祐之)が描いた薬草類の写生画集です 。安永8年(1779年)に幕府へ献上され、紅葉山文庫に収蔵されました 。全28冊からなり 、他に「草木別録」2冊と本書作成の経緯を記した「添書」1冊が含まれています 。
1月2日


シーボルトが日本滞在中に多数の植物標本を収集し日本の植物誌を編纂:『日本植物誌』“Flora Japonica”
『日本植物誌』は、正式名称を"FloraJaponica"といい、1835年から分冊の形で刊行が始まり、シーボルトの死後、1870年に完結しました。これは、日本の植物をヨーロッパに紹介した最初の本格的な植物誌であり、ツンベルクやケンペルの業績の上に成り立つものでした。
1月1日


身辺で見かける植物を写実的に描いた多色刷りの木版本:草木花実写真図譜
川原慶賀(1786~1860頃)は、江戸時代後期、海外との唯一の窓口であった長崎において活躍した卓越した画家です。特に、オランダ商館が置かれた出島への出入りを許された数少ない絵師の一人として、西洋の文化や学術に触れる特異な立場にありました。その精密な描写力から「カメラなき時代のカメラマン」とも称され、対象を忠実に捉える写実的な画風は、当時の日本の絵画において際立った存在でした。
1月1日


大阪出身の実業家で趣味人・加賀豊三郎の椿画譜:椿譜/椿花一束/名物椿譜
加賀氏は古典籍や美術品の収集に情熱を注ぎ、「加賀文庫」として東京都立中央図書館に所蔵されている約24,100点の蔵書を形成しました。このコレクションには、江戸後期の文芸に関する貴重な資料が多く含まれています。
2024年12月15日


江戸の知と美が織りなす花の世界:松岡恕庵と『怡顔斎桜品・梅品』
『怡顔斎桜品』と『怡顔斎梅品』は、江戸時代中期の博物学者である松岡恕庵によって編纂された、類まれな植物図譜です。これらの図譜は、単なる植物の絵画集や分類記録にとどまらず、当時の日本の桜と梅の多様な品種を、極めて精緻な筆致と詳細な解説で記録した、学術的かつ芸術的に非常に価値の高い作品として知られています。
2024年11月30日


『聚芳図説』が語る江戸の華:花卉・園芸文化に息づく美と知の探求
日本の四季が織りなす豊かな自然は、古くから人々の心に深く寄り添い、生活に彩りを加えてきました。花々は単にその美しさゆえに愛でられるだけでなく、そこには深い精神性や知的な探求が息づく、独自の文化が育まれてきました。江戸時代に生み出された一冊の植物図譜、『聚芳図説』(じゅほうずせつ)は、当時の人々の花への情熱、そして自然と向き合う真摯な姿勢を現代に伝える貴重な資料です。
2024年11月24日


白に宿る生命の輝き:斎藤兼光が遺した『一白花譜』の深遠なる世界
『一白花譜』は、寛文12年(1672)に生まれ、享保19年(1734)に没した本草学者、斎藤兼光によって編纂された植物図譜です。この図譜の最大の特徴は、描かれた植物がすべて「白い花」であるという点にあります。当時の植物図譜が、多種多様な植物を網羅的に記録することを主眼としていたのに対し、『一白花譜』は、特定の色彩、すなわち「白」に焦点を絞り、その多様な表情を克明に描き出しています。
2024年11月22日


朝、鮮やかな珍しい花の朝顔集:朝鮮珍花蕣集
一輪の朝顔に、どれほどの歴史と情熱が込められているか、想像したことはあるでしょうか。朝に咲き、昼にはその姿を閉じる朝顔の儚い美しさは、古くから日本人の心を捉えてきました。しかし、その刹那の輝きの中に、人々は不朽の遺産を見出し、それを形として残そうとする強い衝動を抱いていたのです。これは、無常の中に美を見出す日本の伝統的な美意識、すなわち「もののあわれ」に通じるものでありながら、同時にその美を永遠に留めようとする創造的な営みでもありました。
2024年9月22日


『扶桑百菊譜』に秘められた江戸の美意識と菊への情熱
日本の秋を彩る花といえば、何を思い浮かべるでしょうか。多くの人が、その高貴な姿で私たちを魅了する「菊」を挙げることでしょう。しかし、この菊が、単なる美しい花としてだけでなく、江戸時代の人々の生活と精神に深く根ざし、独自の文化を育んできたことをご存知でしょうか。
2024年9月22日


江戸の奇跡、刹那の美を映す『朝かがみ』:変化朝顔に宿る日本人の精神性
朝露に濡れ、一瞬の輝きを放つ花々。そのはかなくも美しい姿を永遠に留めたいと願う心は、いつの時代も人々を魅了してきました。特に日本の花卉/園芸文化においては、その願いが独自の形で昇華され、驚くべき美の世界を創り出しました。江戸時代に隆盛を極めた「変化朝顔」は、まさにその象徴であり、予測不能な突然変異によって生まれる唯一無二の姿は、当時の人々の心を熱狂させました。この独特な美意識と、それを後世に伝えようとする情熱が凝縮された一冊が、文久元年(1861)に刊行された図譜『朝かがみ』です。
2024年7月1日


幕末期に渡来した植物の図譜:新渡花葉図譜
本稿では、江戸時代中期に尾張藩士・渡辺又日菴によって描かれた稀有な植物図譜、『新渡花葉図譜』に光を当てます。この画譜は、当時の人々の植物への深い眼差し、知的好奇心、そして卓越した写実表現が融合した、まさに「植物の肖像」と呼べるものです。
2024年6月20日


「竹譜」に息づく日本の心:武蔵石寿が描いた竹の美と哲学
日本庭園に響く風の音、茶室に飾られた花入れ、そして食卓を彩る旬の筍料理。私たちの暮らしのいたるところに、竹は静かに、しかし確かに息づいています。このしなやかで力強い植物は、単なる素材を超え、古くから日本人の精神性や美意識と深く結びついてきました。なぜ、これほどまでに日本人は竹に魅せられるのでしょうか?
2024年6月9日


木版多色の美しい図が挿入された栽培手引書:花壇朝顔通
『花壇朝顔通』は、江戸時代後期に刊行された、朝顔の多様な品種を図と文章で詳細に解説した図譜です。この書物は単なる植物図鑑の域を超え、当時の朝顔栽培における専門知識、鑑賞の基準、そして美意識が凝縮された、まさに「朝顔愛好家のバイブル」ともいうべき内容となっています。
2024年6月8日


日光に自生する植物の図譜:日光山草木之図
『日光山草木之図』は、江戸時代後期の本草学者である岩崎灌園によって描かれた、日光に自生する植物の図譜です。この図譜は7巻・目録1巻から構成され、127品目の植物画が収録されています。各植物画には、植物の形態や花の色に加え、採取場所などの詳細な情報が記録されており、灌園自身や他の採集家によって日光で採取された植物を写生し、解説を加えたものです。
2024年5月25日


江戸の粋と自然への眼差し:旗本・水野忠暁が遺した『草木錦葉集』の魅力
私たちは、植物のどこに美を見出すのでしょうか?均整の取れた完璧な姿でしょうか、それとも予期せぬ変化の中に、より深い魅力を感じるのでしょうか?日本の花卉/園芸文化は、単なる趣味の領域を超え、豊かな歴史と奥深い精神性を内包しています。特に江戸時代は、将軍から庶民に至るまで、あらゆる階層の人々が草花を愛で、その多様性を追求する園芸文化が隆盛を極めた時代でした。この時代には、単に美しい花を鑑賞するだけでなく、個性的な品種や、変わった色、形、そして「斑(ふ)」と呼ばれる模様を持つ植物に特別な価値を見出す、独自の美意識が育まれました。
2024年5月23日


花開く百の麗姿:永斎筆『花菖蒲図譜』が誘う、江戸園芸文化の深奥
初夏の水辺に、凛として咲き誇る花菖蒲。その優美な姿は、古くから多くの日本人を魅了し、詩歌や絵画の題材となってきました。しかし、この花の背後には、単なる美しさだけではない、日本の豊かな文化と精神性が息づいていることをご存知でしょうか。
本記事では、永斎筆『花菖蒲図譜』を紐解きながら、日本の花卉/園芸文化が育んできた美意識と、花菖蒲に込められた深い意味を探求します。この図譜は、作者や制作時期に多くの謎を秘めながらも、その作者が江戸時代後期の著名な本草学者・画家である坂本浩雪(永斎)である可能性が指摘されており、私たちに江戸時代の園芸文化の熱気と、花を愛する人々の情熱を鮮やかに伝えてくれます
2024年5月12日
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