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花卉/園芸
日本の豊かな自然が育む、多種多様な花卉や園芸の世界。四季折々の美しい花々、伝統的な園芸文化、最新の園芸情報、そして植物と人々の暮らしの関わりについてご紹介します。


公孫樹:悠久の時を生きる、日本の文化的聖樹
公孫樹は、その特異な歴史から「生きる化石」と称されます。その祖先が地球上に現れたのは、約2億5千万年以上も昔、恐竜が闊歩していた古生代の終わり頃とされています。当時、世界中で繁茂していたイチョウの仲間たちは、その後の氷河期を乗り越えることができず、ほとんどが絶滅しました。しかし、ただ一種、この公孫樹のみが生き残り、その姿を現代まで保ち続けているのです。
9月9日


香りが見つける日本の秋の心:金木犀が紡ぐ物語
金木犀(キンモクセイ)は、モクセイ科モクセイ属に分類される常緑の小高木です。原産地は中国南部とされ、秋の深まりとともに、9月下旬から10月中旬にかけて、強い芳香を放つ小さな橙黄色の花を枝いっぱいに密生させて咲かせます。その香りから、英名では「Fragrant olive(香り高いオリーブ)」や「Sweet olive(甘いオリーブ)」と呼ばれ、オリーブと同じ科に属することが示されています。
9月9日


風に響く古の歌:万葉集の秋の七草と日本の心
空気が澄みわたり、陽光がやわらかな金色を帯び始める頃、日本の野山は静かな変容の季節を迎えます。夏の濃い緑は次第に落ち着きを取り戻し、風が草木を揺らす音には、どこかもの寂しくも心地よい響きが混じります。古来、日本人はこのような秋の草花が咲き乱れる野辺を「花野(はなの)」と呼び、その移ろいゆく風景を愛でてきました 。
桜の華やかな饗宴や、燃えるような紅葉狩りとは異なり、秋の花野の魅力はより静かで内省的です。そこには、足元にひっそりと咲く、素朴な野の花々の姿があります。今から1300年以上も昔、奈良時代の歌人によって選び出された七種類の草花、「秋の七草」。これらは単なる植物のリストではありません。一見すると地味なこれらの花々は、一体どのようにして、一つの国の文化的なアイデンティティ、自然との関わり、そして独自の美意識の深淵を解き明かす鍵となり得るのでしょうか。この稿では、秋の七草というレンズを通して、日本の精神文化の奥深くへと分け入る旅にご案内します。
8月19日


緋色のパラドックス:二つの世界に咲く花、彼岸花
日本の秋が深まり、黄金色に輝く稲穂が頭を垂れる頃、日本の原風景ともいえる田んぼの畦や小道に、突如として燃えるような真紅の花々が姿を現します。それは彼岸花。葉を一枚も持たず、しなやかな茎の先に複雑で華麗な花だけを咲かせるその姿は、息をのむほどに美しく、見る者を惹きつけます。しかし、この圧倒的な美しさとは裏腹に、彼岸花は古くから畏敬と、時には恐怖の念をもって語り継がれてきました。ある時は天上の吉兆を示す聖なる花と崇められ、またある時は死や不吉を象徴する花として忌み嫌われるのです。
一つの花が、なぜこれほどまでに多くの矛盾を内包しているのでしょうか。生と死、毒と薬、聖と俗。彼岸花という一つの植物の中に、なぜこれほどまでに対極的な意味が見出されるのでしょう。この記事では、日本の花卉文化の中でも特に謎めいた存在である彼岸花の多面的な本質に迫ります。その特異な生態から、日本列島を渡ってきた歴史、そして人々の精神世界や芸術に与えてきた深い影響までを紐解きながら、この緋色の花が私たちに問いかけるもの、その魅力の根源を探る旅へと読者の皆様をご案内します。
8月17日


泥中から咲き誇る美:日本の文化と精神に息づく蓮の物語
泥の中から、清らかで荘厳な花を咲かせる植物、蓮。その姿は、私たちに何を語りかけているのでしょうか。日本の夏の水辺を彩る蓮は、単なる美しい花ではありません。古くから日本の文化と精神に深く根ざし、数々の物語や思想を育んできました。
7月16日


太陽を追い、心を照らす花:日本文化における向日葵の深遠な魅力
向日葵の原産地は、北アメリカ大陸です。この地の先住民たちは、古くから向日葵を重要な作物として栽培し、その種子や油を食用や薬用として利用していました。16世紀に入ると、スペインの探検家たちが新大陸から向日葵をヨーロッパへと持ち帰り、その後、観賞用や食用油の原料としてヨーロッパ全土に広まっていきました。
7月4日


日本の夏を彩る「鬼灯(ホオズキ)」:その歴史と文化の息吹
ホオズキ(鬼灯・酸漿、学名:Physalis alkekengi)は、ナス科ホオズキ属に属する一年草、多年草、または宿根草です。その最も特徴的な外観は、夏から初秋にかけて朱色から赤く色づく、提灯のような袋状の「萼(がく)」です。
6月29日


闇夜に眠り、朝に微笑む神秘の樹:合歓木が語る日本の心象風景
合歓木(ねむのき)は、マメ科ネムノキ属に分類される落葉高木で、学名をAlbizia julibrissin(アルビジア・ジュリブリッシン)といいます。英語圏では「シルクツリー(Silk Tree)」や「ミモザツリー(Mimosa Tree)」とも呼ばれますが、日本ではその特徴的な習性から「合歓木」、すなわち「眠りの木」という詩的な名前で親しまれてきました。
6月24日


日本の心象風景を彩る花:桔梗の魅力
桔梗は、日本を含む東アジアを原産とするキキョウ科キキョウ属の多年草です。その草丈は品種によって幅があり、20cmから150cmにまで成長します 。初夏にあたる6月から秋の10月にかけて、長い期間にわたって開花期を迎えます。
6月24日


夏を彩る「百日紅」:日本の花卉文化に息づく美と精神
百日紅は、ミソハギ科サルスベリ属に分類される落葉高木です。原産地は中国南部。日本の夏の厳しい暑さにも負けず、7月から9月にかけての盛夏期に見頃を迎え、新しい枝の先端に鮮やかな花を咲かせます。その花色はピンク、白、赤、紫と多彩であり 、花びらは縮れて波打つような特徴的な形をしています。
6月24日


伝説と芸術に息づく日本の蔓草:定家葛
テイカカズラ(定家葛、学名:Trachelospermum asiaticum)は、日本の本州、四国、九州、そして朝鮮半島を原産とするキョウチクトウ科の常緑つる性木本植物です。初夏(5月から6月)に、甘い芳香を放つ白い花を咲かせ、咲き進むにつれてクリーム色へと変化します。
5月3日


万葉の香、庭先の陰:馬酔木
アセビ(学名:Pierisjaponica)は、ツツジ科アセビ属に分類される常緑性の低木で、日本の固有種とされています。宮城県以南の本州、四国、九州の山地に自生するほか、庭木や公園樹としても広く植えられています。 顕著な特徴の一つは、早春、多くは2月から4月にかけて開花する、白や淡いピンク色の小さな花です。
4月23日


富貴の譜:牡丹が彩る日本の文化譚
牡丹は中国北西部を原産地とするボタン科の落葉低木です。中国においては、古くから薬用植物としての価値が高く評価され、紀元500年頃に成立したとされる『神農本草経』にも薬草として記載されています。特にその根の皮(牡丹皮)は、漢方薬として様々な病の治療に用いられました。
4月23日


筆と庭と祭りと:日本の躑躅を巡る物語
ツツジ属(Rhododendron)に属する躑躅は、春から初夏にかけて日本の街や庭園を彩る、ひときわ目を引く花木です。その鮮やかな色彩と多様な形態は、古来より日本人の心を捉え、単なる美しい植物としてだけでなく、文化、芸術、そして精神生活の様々な側面に深く根付いてきました。
3月29日


土を肥やし、心を潤す:蓮華草の文化誌
レンゲソウ、あるいはゲンゲとも呼ばれるこの植物は、春の訪れとともに、日本の各地でその紫紅色の花を咲かせます。特に水田地帯では、その一面に広がる様子が、まるで紫の絨毯を敷き詰めたように見えることから、古くから日本人の心を捉えてきました。
3月29日


古都の彩り、里山の息吹:スミレ(菫)の文化誌
スミレ(菫)という名は、日本においてスミレ属(Viola)の植物全般を指す総称として広く用いられています。しかし、厳密には、日本原産の多年草であるViola mandshurica という特定の種を指す名称でもあります。
3月28日


静寂と調和の芸術:日本の庭園文化
日本の庭園文化は、その独特な美学と哲学的な背景により、世界中で高く評価されています。単なる美しい風景の配置にとどまらず、日本の庭園は芸術、哲学、そして精神性を深く体現しています。その静謐な空間は、見る人に安らぎと瞑想の機会を与え、自然との調和を促します。
3月20日


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