草木に宿る物語:草木奇品家雅見
- JBC
- 2023年8月11日
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更新日:4 日前
草木奇品家雅見は、文政10年(1827年)に刊行された、江戸時代後期の奇品植物図譜です。青山(現在の港区北西部)で変珍木を扱っていた植木屋を営む増田繁亭(通称・金太)が著しました。本書の挿絵は、植物図譜で知られる関根雲停と、文人画家として知られる大岡雲峰の二人の画家によって描かれました。
本書には、斑入りや枝垂れなど、江戸および近郷の「好人」(愛好家)が所有する奇品約500点が掲載されています。所有者の名前と住所、逸話なども合わせて紹介されている点が特徴です。「奇品」とは、珍しい形や性質を持つ植物のことで、例えば、斑入りの葉や、枝垂れる枝、変わった花の形をしたものなどが挙げられます。増田繁亭は、江戸時代後期の旗本園芸家・水野忠暁の手元にあった、斑入りなど奇品の資料をもとに本書を作成しました。
草木奇品家雅見が扱う主な植物
草木奇品家雅見では、花を観賞する植物から葉を観賞する植物まで、多岐にわたる植物を扱っていました。
花を観賞する植物 | 葉を観賞する植物 |
ツツジ | モミジ |
キク | カラタチバナ |
サクラ | オモト |
ボタン | マツバラン |
ウメ | セッコク |
アサガオ | |
ハナショウブ | |
ナデシコ |
草木奇品家雅見の作品の特徴
草木奇品家雅見の特徴としては、以下の点が挙げられます。
豊富な図版:約500点もの奇品植物が、精緻な図版で描かれています。
詳細な解説:各植物の特徴や来歴、栽培方法などが詳しく解説されています。
所有者情報の記録:植物の所有者に関する情報が記録されている点は、当時の園芸文化を知る上で貴重な資料となっています。
草木奇品家雅見の魅力
草木奇品家雅見の魅力は、江戸時代後期の園芸文化を垣間見ることができる点にあります。当時の園芸家たちが、どのような植物を珍重し、どのように栽培していたのかを知ることができます。また、植物にまつわる逸話や、所有者たちの交流なども伺い知ることができ、当時の文化や社会の様子を理解する一助となります。
草木奇品家雅見は、花の美しさだけでなく、葉の面白さにも注目が集まっていたことを示す資料でもあります。当時、ツツジやキク、サクラなど、花を愛でる文化が主流でしたが、モミジやカラタチバナなど、葉の美しさを楽しむ文化も並行して発展していました。ヨーロッパで観葉植物が普及するのは20世紀に入ってからであることを考えると、江戸時代における観葉植物への関心の高さが伺えます。
結論
草木奇品家雅見は、江戸時代後期の園芸文化を今に伝える貴重な資料です。豊富な図版と詳細な解説に加え、所有者情報や逸話など、人間的な側面に焦点を当てている点は、この作品独自の魅力と言えるでしょう。
草木奇品家雅見は、当時の園芸家たちの美意識や、植物に対する深い知識、そして植物を介した人間関係を垣間見ることができます。また、花だけでなく葉も観賞の対象としていたことからも、江戸時代の人々の自然に対する豊かな感性が伺えます。
研究者にとっては、当時の園芸技術や植物の流通、園芸文化と社会との関わりなどを研究する上で、草木奇品家雅見は大変貴重な資料です。
一 巻
金太 撰輯『草木奇品家雅見 3巻』,文政10 [1827]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2607723
二 巻
金太 撰輯『草木奇品家雅見 3巻』,文政10 [1827]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2607723
三 巻
金太 撰輯『草木奇品家雅見 3巻』,文政10 [1827]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2607723
参考
奇品家雅見(草木奇品家雅見) - 国立公文書館