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植物図譜
植物図譜(しょくぶつずふ)とは、様々な植物を写真や写生画などの図と説明文によって解説した書籍です。学術的な研究資料としてだけでなく、美術品としての美しさも兼ね備え、鑑賞の対象としても親しまれています。植物の分類・同定、多様性理解、植物学研究の基礎資料、知識普及など、多岐にわたる重要な役割を担っています。


白に宿る生命の輝き:斎藤兼光が遺した『一白花譜』の深遠なる世界
『一白花譜』は、寛文12年(1672)に生まれ、享保19年(1734)に没した本草学者、斎藤兼光によって編纂された植物図譜です。この図譜の最大の特徴は、描かれた植物がすべて「白い花」であるという点にあります。当時の植物図譜が、多種多様な植物を網羅的に記録することを主眼としていたのに対し、『一白花譜』は、特定の色彩、すなわち「白」に焦点を絞り、その多様な表情を克明に描き出しています。
2024年11月22日


朝、鮮やかな珍しい花の朝顔集:朝鮮珍花蕣集
一輪の朝顔に、どれほどの歴史と情熱が込められているか、想像したことはあるでしょうか。朝に咲き、昼にはその姿を閉じる朝顔の儚い美しさは、古くから日本人の心を捉えてきました。しかし、その刹那の輝きの中に、人々は不朽の遺産を見出し、それを形として残そうとする強い衝動を抱いていたのです。これは、無常の中に美を見出す日本の伝統的な美意識、すなわち「もののあわれ」に通じるものでありながら、同時にその美を永遠に留めようとする創造的な営みでもありました。
2024年9月22日


『扶桑百菊譜』に秘められた江戸の美意識と菊への情熱
日本の秋を彩る花といえば、何を思い浮かべるでしょうか。多くの人が、その高貴な姿で私たちを魅了する「菊」を挙げることでしょう。しかし、この菊が、単なる美しい花としてだけでなく、江戸時代の人々の生活と精神に深く根ざし、独自の文化を育んできたことをご存知でしょうか。
2024年9月22日


江戸の奇跡、刹那の美を映す『朝かがみ』:変化朝顔に宿る日本人の精神性
朝露に濡れ、一瞬の輝きを放つ花々。そのはかなくも美しい姿を永遠に留めたいと願う心は、いつの時代も人々を魅了してきました。特に日本の花卉/園芸文化においては、その願いが独自の形で昇華され、驚くべき美の世界を創り出しました。江戸時代に隆盛を極めた「変化朝顔」は、まさにその象徴であり、予測不能な突然変異によって生まれる唯一無二の姿は、当時の人々の心を熱狂させました。この独特な美意識と、それを後世に伝えようとする情熱が凝縮された一冊が、文久元年(1861)に刊行された図譜『朝かがみ』です。
2024年7月1日


幕末期に渡来した植物の図譜:新渡花葉図譜
本稿では、江戸時代中期に尾張藩士・渡辺又日菴によって描かれた稀有な植物図譜、『新渡花葉図譜』に光を当てます。この画譜は、当時の人々の植物への深い眼差し、知的好奇心、そして卓越した写実表現が融合した、まさに「植物の肖像」と呼べるものです。
2024年6月20日


「竹譜」に息づく日本の心:武蔵石寿が描いた竹の美と哲学
日本庭園に響く風の音、茶室に飾られた花入れ、そして食卓を彩る旬の筍料理。私たちの暮らしのいたるところに、竹は静かに、しかし確かに息づいています。このしなやかで力強い植物は、単なる素材を超え、古くから日本人の精神性や美意識と深く結びついてきました。なぜ、これほどまでに日本人は竹に魅せられるのでしょうか?
2024年6月9日


木版多色の美しい図が挿入された栽培手引書:花壇朝顔通
『花壇朝顔通』は、江戸時代後期に刊行された、朝顔の多様な品種を図と文章で詳細に解説した図譜です。この書物は単なる植物図鑑の域を超え、当時の朝顔栽培における専門知識、鑑賞の基準、そして美意識が凝縮された、まさに「朝顔愛好家のバイブル」ともいうべき内容となっています。
2024年6月8日


日光に自生する植物の図譜:日光山草木之図
『日光山草木之図』は、江戸時代後期の本草学者である岩崎灌園によって描かれた、日光に自生する植物の図譜です。この図譜は7巻・目録1巻から構成され、127品目の植物画が収録されています。各植物画には、植物の形態や花の色に加え、採取場所などの詳細な情報が記録されており、灌園自身や他の採集家によって日光で採取された植物を写生し、解説を加えたものです。
2024年5月25日


江戸の粋と自然への眼差し:旗本・水野忠暁が遺した『草木錦葉集』の魅力
私たちは、植物のどこに美を見出すのでしょうか?均整の取れた完璧な姿でしょうか、それとも予期せぬ変化の中に、より深い魅力を感じるのでしょうか?日本の花卉/園芸文化は、単なる趣味の領域を超え、豊かな歴史と奥深い精神性を内包しています。特に江戸時代は、将軍から庶民に至るまで、あらゆる階層の人々が草花を愛で、その多様性を追求する園芸文化が隆盛を極めた時代でした。この時代には、単に美しい花を鑑賞するだけでなく、個性的な品種や、変わった色、形、そして「斑(ふ)」と呼ばれる模様を持つ植物に特別な価値を見出す、独自の美意識が育まれました。
2024年5月23日


花開く百の麗姿:永斎筆『花菖蒲図譜』が誘う、江戸園芸文化の深奥
初夏の水辺に、凛として咲き誇る花菖蒲。その優美な姿は、古くから多くの日本人を魅了し、詩歌や絵画の題材となってきました。しかし、この花の背後には、単なる美しさだけではない、日本の豊かな文化と精神性が息づいていることをご存知でしょうか。
本記事では、永斎筆『花菖蒲図譜』を紐解きながら、日本の花卉/園芸文化が育んできた美意識と、花菖蒲に込められた深い意味を探求します。この図譜は、作者や制作時期に多くの謎を秘めながらも、その作者が江戸時代後期の著名な本草学者・画家である坂本浩雪(永斎)である可能性が指摘されており、私たちに江戸時代の園芸文化の熱気と、花を愛する人々の情熱を鮮やかに伝えてくれます
2024年5月12日


江戸の知と美の結晶:本草書『花彙』が織りなす日本の花卉/園芸文化
『花彙』は、宝暦9年(1759)から明和2年(1765)にかけて京都の文昌閣から刊行された、全8巻からなる大規模な植物図集です。草編4巻、木編4巻で構成され、当時の日本で知られていた多種多様な植物が網羅されています。
2024年5月5日


『花菖蒲図譜』に息づく日本の美意識:近代植物学と伝統園芸文化の融合
『花菖蒲図譜』は、明治時代から大正時代にかけて、日本の花菖蒲の多様な品種を精緻な植物画と詳細な解説で記録した、学術的かつ芸術的価値の高い図譜です。この図譜は、単に花菖蒲の姿を写し取ったものではありません。各品種の形態的特徴、色彩、斑の入り方、草丈、開花時期といった詳細な情報が、植物学的な正確さをもって描かれ、記述されています。これは、失われゆく花菖蒲の品種を後世に伝えるための貴重な資料として編纂されたものです。
2024年5月4日


明治31年刊行 芍薬の名品図譜:『芍薬花譜』
『芍薬花譜』は、明治31年(1898)に刊行された、芍薬の多様な品種を精緻な彩色木版画で描いた貴重な植物図譜です。この図譜は、当時の人々の芍薬に対する高い関心と、明治期における園芸技術の発展を示す資料として、単なる植物学的な記録に留まらず、芸術作品としても高く評価されています。
2024年5月3日


現在のクローバーの渡来事情と和名シロツメクサ(白詰草)の由来の記述:竹園草木図譜
『竹園草木図譜』は、江戸時代後期の幕臣であった貴志忠美によって著された、肉筆による植物図譜です。この図譜には、忠美自身が直接観察し、写生した植物が、その形態、特徴、名称などと共に詳細に記録されています。これは、単に既存の文献を編纂したものではなく、著者自身の経験的知識と観察眼に基づいた一次資料としての性格を強く有していることを示唆しています。
2024年4月16日


花と知の探求:幕末の博物学者、貴志忠美が描いた「本草寫生」の世界
本草寫生には、当時珍しかった植物の観察記録が含まれています。特に注目すべき点は、オクラの栽培に関する記述です。写生帳には「安政元年(1854年)に江戸から送られてきた魯西亜豆(おろしやまめ)を蒔いたら、トロロアオイに似た花が咲き、トウガラシのような実が成った」という記録があります
2024年4月16日


『万葉集』に息づく植物の魂:鹿持雅澄『万葉集品物図絵』が誘う古の園芸世界
本記事では、江戸時代後期に生きた一人の国学者、鹿持雅澄(かもち まさずみ)が、その深い学識と情熱を注ぎ込んで生み出した稀有な画譜、『万葉集品物図絵(まんようしゅうひんぶつずえ)』に焦点を当てます。この画譜は、単なる植物図鑑を超え、『万葉集』の世界を視覚的に、そして精神的に深く理解するための画期的な試みでした。雅澄の視点を通して、いにしえの人々が愛でた植物の姿と、そこに込められた日本の花卉・園芸文化の真髄を探求し、現代に生きる私たちへと繋がるその魅力を紐解いていきます。
2024年4月15日


艸花絵前集 - 江戸前期の園芸文化を彩る草花図譜
元禄12年(1699)に出版された『艸花絵前集』(草花絵前集とも記されます)は、江戸時代前期の園芸文化を象徴する重要な草花図譜です。本書は、草花の絵を中心とし、その余白に花の色や開花時期などの解説を付したもので、視覚的な美しさと実用的な情報を兼ね備えています。この図譜が刊行された元禄年間(1688~1704)は、町人文化が爛熟期を迎え、園芸を含む多様な文化芸術が隆盛を極めた時代でした。このような時代背景のもと、『艸花絵前集』は、園芸を愛好する人々の間で広く受け入れられたと考えられます。
2024年4月14日


幕末期渡来植物の図譜:新渡花葉圖譜
本書は国立国会図書館に収蔵されているもので、1914年に伊藤圭介(幕末から明治期の本草学者・蘭学者・博物学者・医学者日本初の理学博士)の孫・伊藤篤太郎が母の小春(圭介の五女)に転写してもらった写本です。
2024年4月13日


飢饉を乗り越えた知恵の結晶:建部清庵と『備荒草木図』
日本の文化に深く根ざす花卉や園芸は、単なる美の追求に留まりません。そこには、自然への敬意、生命への慈しみ、そして困難を乗り越えるための知恵が息づいています。この奥深い精神性は、日本の花卉・園芸文化の核心を成すものです。今回は、江戸時代に一関藩の藩医であった建部清庵が編纂した『備荒草木図』という一冊の書物を通して、その知られざる叡智に触れていきます。飢饉という極限状況下で、人々がいかに植物と向き合い、生き抜く知恵を見出したのか。この古書が現代に伝えるメッセージとは何か、その魅力を探る旅に出かけましょう。
『備荒草木図』は、直接的に観賞用の花卉や園芸技術を解説するものではありませんが、その根底には、自然の恵みを最大限に活かし、生命を尊び、困難を乗り越えようとする、日本文化に共通する普遍的な価値観が流れています。この書物が示すのは、単なる歴史的事実を超え、現代の私たちにも通じる、自然との共生と持続可能な暮らしへの示唆です。
2024年4月5日


汐入りの庭:江風山月樓から浴恩園へ
松平定信は、江戸時代後期の政治において、「寛政の改革」を主導したことで知られる卓越した経世家でした。徳川八代将軍吉宗の孫という血筋を引き 、老中首座として幕政を担ったその手腕は、厳格な改革者のイメージを伴うことが多いです。しかし、定信の人物像はそれだけに留まりません。彼はまた、文学、美術、そして作庭といった分野にも深い造詣と情熱を注いだ文化人でもありました 。江戸時代の大名にとって、庭園の造営は単なる慰楽のためだけでなく、政治的駆け引きの場、洗練された文化の誇示、そして個人的な美意識の表現の手段でもありました。定信の作庭活動は、こうした時代背景の中で、彼の多面的な個性を映し出す鏡であったと言えるでしょう。
2024年3月24日


江戸桜、紙上に永遠の春を刻む:『古今要覧稿』の桜図譜
江戸時代後期に活躍した国学者、屋代弘賢(1758~1841)は、近世日本の知の集積と編纂事業に多大な貢献を果たした人物です。江戸に生まれた弘賢は、塙保己一に国学を、山本北山に儒学を、冷泉為村に和歌を学ぶなど、広範な学問分野に精通していました。その学識は幕府にも認められ、書役から右筆へと昇進し、最終的には奥右筆格旗本として幕政の中枢にも関与しました。
2024年3月8日


色彩の記憶、紙上に咲く江戸の桜草:坂本浩然のまなざし/桜草寫真(躑躅譜、桜花譜含む)
坂本浩然(1800~1853)は、江戸時代後期に活躍した傑出した人物であり、医師(紀州藩医)としての務めを果たす傍ら、本草学者としても深い知識を有していました 。浩然は特に植物画家として名高く、植物や菌類を精密かつ美的に描いた図譜、画譜、画帖を数多く残したことで知られています。これらの作品は、単に博物学史上の貴重な史料としてだけでなく、日本美術史における花鳥画としても高く評価されています。
2024年3月2日


時を超えて息づく、草木へのまなざし:橘保国『繪本野山草』が紐解く江戸の園芸美学
本書には、山野に自生する植物が165品目、あるいは一部の資料によれば185種もの草木が、狩野派の画法を用いて極めて精緻に描かれています。宝暦5年という刊行年は、江戸時代が泰平の世を迎え、庶民文化が花開き、学術的な探求も盛んに行われた文化的な隆盛期に位置します。この時期にこのような大規模な植物図譜が制作されたことは、当時の社会が植物に対して多大な関心を寄せていたこと、そして出版文化が成熟していたことを示しています。本書は、その時代の息吹を現代に伝える、まさに江戸を彩った植物図譜の傑作と言えるでしょう。
2023年12月23日


北の大地に息づく生命の記録:『小林源之助の蝦夷草木図』が語る江戸の自然観
『小林源之助の蝦夷草木図』は、江戸時代後期に小林源之助によって描かれた、蝦夷地の植物を主題とした画帖です。この画帖は、単なる植物の写生に留まらず、当時の蝦夷地の植生を極めて詳細かつ正確に記録した、学術的価値と芸術的価値を兼ね備えた貴重な作品として知られています。
2023年12月10日
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