作者 狩野永敬 制作時代 江戸時代・17世紀 員数 6曲1双 鎌倉時代前期の公卿,歌人,古典学者である藤原定家の自撰歌集である『拾遺愚草』の中の「後仁和寺宮花鳥」として収められる24首の月次(つきなみ)の和歌「詠花鳥和歌各十二首」に詠まれた12か月の花と鳥を月順に右から左へ配した「十二ヶ月花鳥図屏風」。 筆者の狩野永敬は、狩野山楽を祖とする京都狩野派の第4代。 ※ここで紹介している和歌はそのうちの花12首のみ。
6枚のパネルをひとつながりにした屏風が、2枚でセットになっています。計12枚のパネルには、さまざまな花や鳥が描かれていますね。よく見ると、桜や藤、菊など、異なる季節に咲く花がつぎつぎに登場しています。 この屏風は江戸時代(17世紀)に描かれたものですが、内容は鎌倉時代前期(12~13世紀)の歌人、藤原定家(ふじわらのていか)が正月から12月までのそれぞれの月を代表する花と鳥を一首ずつ詠んだ計24首の和歌、「詠花鳥和歌各十二首」をもとにしています。定家の詠んだこれらの和歌は、当時の貴族や大名にとっては必須の教養で、しばしば絵画や工芸作品のテーマになりました。屏風の絵が、和歌の内容を視覚化しているのです。 1月は柳と鶯、2月は桜と雉、というように、各月の花と鳥を、順番に12枚のパネルに右から左へと配置し、連続する風景として絵にしています。12か月のモチーフを取り上げる趣向の屏風は他にもありますが、12枚がそれぞれ独立した絵に分かれているものが多い中、ひとつながりの景色として描いている点も特徴的です。めぐる一年の花鳥を月と太陽と共に画面に盛り込み、まるでこの作品の中に世界が凝縮されているような完全性を、破たんなくひとつの景色として仕上げる作者、狩野永敬(かのうえいけい)の構成力が光ります。
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全体図(正月~6月)
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正月、二月
正月(図 右側) 柳 うちなびき春くる風の色なれや日をへてそむる青柳の糸
二月(図 左側) 櫻 かざし折るみちゆき人のたもとまで櫻ににほふきさらぎのそ
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三月、四月
三月 (図 右側) 藤 ゆくはるのかたみとやさく藤の花そをだにのちの色のゆかりに
四月 (図 左側) 卯花 白妙の衣ほすてふ夏のきてかきねもたわにさける卯花
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五月、六月
五月 (図 右側) 廬橘 ほととぎすなくや五月のやどがほにかならずにほふのきのたち花 (廬橘とは、金柑説、夏蜜柑説、橙説があるようです)
六月 (図 左側) 常夏 大かたの日かげにいとふ水無月のそらさへをしき常夏の花 (常夏とは、撫子のこと)
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全体図(七月~十二月)
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七月、八月
七月 (図 右側) 女郎花 秋ならでたれもあひみぬ女郎花契りやおきし星合のそら
八月 (図 左側) 鹿鳴草 秋たけぬいかなる色とふく風にやがてうつろふもとあらの萩 (鹿鳴草とは、萩のこと)
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九月、十月
九月 (図 右側) 薄 花すすき草のたもとのつゆけさをすてて暮れゆく秋のつれなさ
十月 (図 左側) 残菊 十月しもよの菊のにほはずは秋のかたみになにをおかまし
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十一月、十二月
十一月 (図 右側) 枇杷 冬の日は木草のこさぬ霜の色を葉かへぬ枝の花ぞまがふる
十二月 (図 左側) 早梅 色うづむかきねの雪のころながら年のこなたに匂ふ梅が枝
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