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描かれた日本の植物
日本の美術作品に描かれた植物に焦点を当て、その魅力や背景にある物語を解き明かすものです。古典に咲く花々、逞しい樹木、美しい文様、そして植物と文化の関係など、様々なテーマで日本の美を彩る植物たちの物語を紹介しています。


恠恠奇奇、金碧の輝き:狩野永徳最晩年の傑作《檜図屏風》
狩野永徳筆《檜図屏風》は、安土桃山時代(1543-1590)を代表する稀代の絵師、狩野永徳の最晩年に制作された傑作であり、日本の国宝に指定されている重要な文化財です。この作品は、桃山時代の豪壮かつ華麗な文化を象徴する金碧障壁画の最高峰の一つとして、日本美術史において確固たる地位を築いています。
5月28日


武蔵野図屏風:月の入るべき峰もなし、武蔵野の詩情
「武蔵野図屏風」は、日本の絵画、特に江戸時代(1615年~1868年)において顕著な位置を占める画題であり、その表現は多岐にわたります。これらの屏風は、広大で詩的な連想に富む武蔵野の秋の情景を描写するのが一般的です。かつては野趣あふれる広野であった武蔵野は、現在では東京北部を中心とした人口密集地となっています。しかし、その地名は古典文学において古くから詩的な場所、すなわち「歌枕」として重要な意味を持ち続けてきました。例えば、『万葉集』や『伊勢物語』にもその名が見え、広大な草むらが広がっていたと想像されます。
5月27日


屏風に咲く墨の詩:鶴亭「花木図押絵貼屏風」に宿る禅と写実の美 参考図・伊藤若冲「花鳥図押絵貼屏風」
「花木図押絵貼屏風」は、鶴亭(かくてい・1722-1785)の筆による絵画作品です 。江戸時代中期の明和4年(1767)に制作されたとされており 、これは鶴亭の活動時期の中期に位置する作品です 。技法は紙本墨画、すなわち水墨画による押絵貼屏風であり 、各扇に個別の水墨画が描かれ、それらが屏風の台紙に貼り付けられています。寸法は各図が縦133.0cm、横50.5cmで、六曲一双の形式で構成されており、合計12面の絵が連なります 。この貴重な作品は九州国立博物館に所蔵されています 。
5月24日


本阿弥光悦:古今和歌集忍草下絵和歌断簡
本阿弥光悦は、桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した、日本美術史における極めて重要な多才な芸術家です。彼の貢献は書道、陶芸、漆芸、出版、工芸と多岐にわたり、後世の日本文化に計り知れない影響を与えました。特に、絵師の俵屋宗達とともに「琳派」の祖として広く認識されています。光悦は単に個々の作品を制作するだけでなく、現代でいう「アートディレクター」のような役割も果たし、京都に芸術村を築き、様々な分野の芸術家たちを束ねて作品制作を指揮しました。この組織的な役割は、彼の芸術家としての貢献を一層際立たせています。
5月24日


奇想の筆、霊峰を舞う:曽我蕭白と三保松原の幻想
我蕭白(享保15年/1730年 - 天明元年/1781年)は、江戸時代中期に活躍した日本絵師であり、自ら「蛇足軒」と号しました。彼はその観る者を驚かせる強烈な画風から、「奇想の絵師」と評されることが多い存在です。同時代の京都で写実的で万人受けする画風で人気を博した円山応挙とは対照的に、蕭白は自身の強烈な個性を貫きました。彼の作品は賛否両論を巻き起こしましたが、その独創性ゆえに熱心な支持者の心を掴みました。これは、当時の京都が文化的に成熟し、多様な芸術表現を受け入れる土壌があったことを示唆しています。
5月23日


「個」の探求者・鈴木其一:朝顔、菖蒲、芥子
鈴木其一(すずききいつ、1796-1858)は江戸時代後期に活躍した江戸琳派の代表的画家であり、酒井抱一の実質的な後継者として知られています。江戸琳派の優美な画風を基盤としながらも、独創的で斬新な作品を多数生み出し、幕末から明治にかけての琳派様式の発展に大きく貢献しました。その大胆な構図と鮮やかな色彩表現は、後世にも高く評価されています。
5月22日


海を渡った日本の美:メトロポリタン美術館の尾形光琳『八橋図屏風』
メトロポリタン美術館が所蔵する八橋図屏風は、江戸時代に活躍した日本の画家、尾形光琳の代表作です。本作品は、日本の古典文学『伊勢物語』に由来する「八橋」の主題を、琳派様式特有の装飾性と大胆な構図で表現した、江戸時代絵画の金字塔とされています。
5月22日


空中斎、季節を織りなす:藤・牡丹・楓図にみる琳派の息吹
本阿弥光甫(ほんあみ こうほ)による三幅対「藤・牡丹・楓図」は、江戸時代初期の日本の花鳥画を代表する傑作の一つであり、作者の洗練された美意識と卓越した技術を如実に示しています。本作は、春の藤、夏の牡丹、秋の楓という、それぞれの季節を象徴する花木を三つの掛軸に描き分けたものであり、東京国立博物館に所蔵されています 。
5月17日


人の一生を山登りに例えた鎌倉時代の作品:おいのさか図
東京国立博物館所蔵の「おいのさか図」は、人間の一生を山の登り降りに例えた珍しい絵画作品です。鎌倉時代(14世紀)に制作されたこの作品は、誕生から死までの人生の旅路を四季の移り変わりとともに描き出し、人生の無常観と四季の変化を重ね合わせた日本美術の代表的作例として貴重な存在となっています。紙本着色で描かれたこの縦長の作品は、日本の伝統的な「老いの坂」の概念を視覚的に表現した稀少な作例であり、日本の中世における人生観と時間認識の理解に重要な手がかりを提供しています。
5月17日


柳揺れる黄金の橋:柳橋水車図屏風
東京国立博物館が所蔵する「柳橋水車図屏風」(りゅうきょうすいしゃずびょうぶ)は、日本の美術史上、特に文化的な活気に満ちた安土桃山時代から江戸時代初期(16世紀末~17世紀初頭)にかけて制作された、視覚的に強烈な印象を与える代表的な屏風絵の一つです。六曲一双の大画面全体に広がる金色の背景、斜めに大胆に横切る太鼓橋、そして自然物と人工物が織りなす構成は、観る者を一瞬にして豪華絢爛でありながらどこか謎めいた世界へと誘います。この屏風は重要美術品に指定されており、その芸術的価値と歴史的重要性が公に認められています。
4月13日


桜と日本文化2 歴史的モチーフとしての表現と象徴性
日本美術において桜は最も重要で親しまれているテーマの一つです。古来より日本人の美意識を反映し、四季を彩る自然の象徴として数多くの芸術作品に登場してきました。
3月9日


春を寿ぐ:住吉具慶筆『観桜図屏風』
観桜図屏風は、住吉具慶が手掛けた六曲一隻の屏風です。制作年代は特定されていませんが、落款から法眼期に制作されたことがわかります。この屏風は、『伊勢物語』第八十二段「渚の院」を題材に、桜を愛でる人々の姿を繊細に描いた作品です。
3月1日


爛漫の宴:狩野長信「花下遊楽図屏風」が映し出す桃山文化の光彩
桃山時代末期から江戸時代初期にかけて制作された狩野長信筆「花下遊楽図屏風」は、日本美術史において極めて重要な位置を占める国宝指定作品です。本屏風は六曲一双の形式を採り、右隻に桜の下での酒宴、左隻に海棠の木下での風流踊りを描くことで、当時の社会的・文化的状況を鮮やかに伝えています。
3月1日


いにしえの調べ:定家十体と和歌の美
定家の業績は、和歌という枠組みを超えて、日本の美意識や文化を理解する上でも重要な意味を持ちます 。定家は、和歌を通して、自然と人間の関わり、感情の機微、そして言葉の美しさを表現しました。彼の作品は、現代においても、私たちに深い感動と共感を呼び起こします。
2月24日


墨に五彩あり:水墨画の梅
水墨画で描かれた黒と白のモノトーンの世界は、日本人の心に深く根付く「わび・さび」などの渋さや質素さを好む文化と相性が良く、 茶道や華道にも通じる、静寂や落ち着きを感じさせる要素を持っています。
2月22日


鈴木松年筆 老松図屏風
松年は明治14年(1881年)に京都府画学校の教授となり、1888年までその職にありました。松年は多くの展覧会に出品し、内国絵画共進会や京都博覧会などで褒賞を受けるなど、国内外で高く評価されました。特に彼の作品は人物画や花鳥画が得意で、大胆かつ豪放な筆使いが特徴です。
2月9日


酒井抱一筆「流水四季草花図屏風」について
酒井抱一筆「流水四季草花図屏風」は、江戸時代後期の絵師、酒井抱一によって描かれた屏風絵です。繊細な筆致で四季折々の草花と流水が描かれており、抱一の特徴である琳派の装飾性と写実性が融合した、優美で華やかな作品です。
2月9日


葛飾北斎の花鳥画24点
北斎は、風景画、美人画、役者絵、花鳥画など、様々なジャンルの作品を手がけ、特に風景画の分野で大きな功績を残しました。代表作である「富嶽三十六景」は、国内外で高く評価され、ゴッホやモネなど、西洋の印象派の画家たちにも大きな影響を与えました。
2月4日


東京国立博物館所蔵「花車図屏風」考
本屏風の特徴は、絢爛豪華な金地を背景に、四季の花々を満載した五輛の花車が描かれている点にあります。それぞれの車には、藤、牡丹、杜若、紫陽花、菊といった、異なる季節の花が飾り付けられており、画面全体に華やかな雰囲気が漂います。
1月26日


四季花鳥画帖が誘う、日本の美意識の深淵:増山雪園が描いた自然の詩
増山正寧、号・雪園は、天明5年(1785)に第5代伊勢長島藩主・増山正賢(号:雪斎)の長男として江戸で生まれました 。享和元年(1801)に父の隠居に伴い家督を継ぎ、第6代藩主となりました。幼少期から聡明で知られ、文政5年(1822年)には幕府の若年寄に任じられるなど、藩政においても儒学者の中島作十郎らを招聘して藩士子弟の教育や文治の発展に尽力しました。
1月26日
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