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漆工と絵画の両方で優れた才能を発揮した柴田是真の画帖:是真画帖

更新日:1月27日


柴田是真について


柴田是真(1807年3月15日 - 1891年7月13日)は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した、日本を代表する漆芸家、絵師です。 本名は順蔵。 幼名は亀太郎。 字は儃然。 令哉、対柳居、枕流亭などの号を用いました。   


是真は、文化4年(1807年)に江戸両国橘町(現在の東京都墨田区)で生まれました。 父は宮彫師の柴田市五郎で、浮世絵を学んでいたといいます。 11歳の時に蒔絵師の古満寛哉に入門し、蒔絵の技術を学びました。 若い頃から、是真は図案を描く能力の必要性を感じ、16歳で鈴木南嶺に師事し、円山四条派の絵画を学びました。 24歳の時には、京都に遊学し、岡本豊彦に四条派を学びました。 また、頼山陽や香川景樹とも親交を深め、見聞を広めました。   


是真は、伝統的な技法を踏まえながらも、常に新しい表現に挑戦しました。 青海波塗を復興させたほか、 青銅塗、四分一塗、鉄錆塗、砂張塗、紫檀塗、墨形塗といった、様々な技法を開発しました。 また、西洋絵画の技法を取り入れ、和紙に色漆で描く独自の「漆絵」を確立しました。   


是真の出世作として知られる「鬼女図額面」は、天保11年(1840年)に王子稲荷神社に奉納された作品です。 謡曲「羅生門」を題材としたこの作品は、渡辺綱が羅生門で鬼女・茨木童子の腕を切り落とした場面を描いたもので、是真の画力を世に知らしめました。   


是真の作品は、国内外で高く評価され、ウィーン万国博覧会などに出品し、受賞を重ねました。 明治天皇の御用を務め、帝室技芸員にも任命されました。 晩年は、後進の育成にも力を注ぎ、多くの弟子を育てました。 さらに、是真は個人的な創作活動だけでなく、「竜池会」(日本美術協会の前身)や「東洋絵画会」の設立に尽力し、漆工技術の普及・発展を目的とした「日本漆工会」を創設するなど、美術界の発展にも貢献しました。   




柴田是真の画帖・是真画帖とは


柴田是真の画帖・是真画帖は、是真が手がけた様々な作品を収録した画帖です。 是真は、写生帖を多数制作しており、 それらは東京藝術大学大学美術館に95冊所蔵されています。 画帖には、花鳥、風景、人物など、様々な題材が描かれています。 また、漆絵の作品も含まれています。  是真の画帖には、絵画だけでなく、書や詩の作品も含まれることがありました。 これは、是真の芸術活動における、様々な表現形式の相互作用を反映していると言えるでしょう。   


是真の画帖は、彼の優れた画力と観察眼、そして豊かな表現力を感じることができます。  精密な描写と大胆な構図、そして洒脱な色彩感覚は、見る者を魅了します。 また、異素材を組み合わせるなど、斬新なアイデアも随所に見られます。   


本稿の是真画帖は、国立国会図書館デジタルコレクションに収蔵されている作品で、是真が明治時代に制作した画帖です。 画帖には、花鳥、人物、風景、器物など、様々な題材が描かれています。 精密な描写と大胆な構図、そして洒脱な色彩感覚は、見る者を魅了します。 また、異素材を組み合わせるなど、斬新なアイデアも随所に見られます。


是真の画帖の主なテーマは、自然と日常生活です。  花鳥、風景、動物、人物など、身近なものを題材に、卓越した描写力で生き生きと描いています。  例えば、「是真髤画帖」には、竹竿に吊るされた亀など、ユニークなモチーフが描かれています。 また、「明治宮殿千種の間 天井画 下絵」には、桜、百合、桔梗、水仙など、日本の四季を彩る花々が描かれています。   


是真は、江戸時代の文化や顧客の影響を受け、作品に「諧謔的な趣向」(ユーモアや遊び心)を取り入れました。 これは、是真の画帖にも見られる特徴です。 例えば、「花瓶梅図漆絵」は、一見すると紫檀の地に梅の枝が活けられた花瓶を描いた蒔絵額のように見えますが、実際には紫檀の部分も漆絵で描かれており、見る者を騙すような仕掛けが施されています。   


また、是真は「変塗」と呼ばれる、漆を用いて他の素材を模倣する技法を駆使しました。 これは、木材や金属、墨などの質感を、漆で巧みに再現する技法で、是真の革新的な技術と美的感覚を示しています。   




最後に


柴田是真の画帖・是真画帖は、是真の優れた画力と多様な表現技法を堪能できる貴重な資料です。  精密な描写、大胆な構図、洒脱な色彩、そしてユーモアとウィットに富んだ表現は、是真ならではの魅力です。 また、是真の画帖は、彼が画家と漆芸家の両方の顔を持ち合わせていたからこそ生まれた、独自の表現形式と言えるでしょう。   


是真の画帖は、単なる記録や下絵ではなく、それ自体が芸術作品としての価値を持つものです。 そこには、是真のたゆまぬ探究心と、新しい表現への挑戦が見て取れます。 是真は、伝統的な日本美術の枠にとらわれず、西洋美術の影響も取り入れながら、独自のスタイルを確立しました。   


是真の画帖は、日本美術史における重要な作品であると同時に、現代の私たちにとっても、多くの示唆を与えてくれるものです。  是真の革新的な素材の使い方や技術は、今日の芸術家やデザイナーにも影響を与え続けています。 また、彼の画帖は、19世紀の日本の芸術や文化を垣間見ることができる、貴重な資料でもあります。





柴田是真 画『是真画帖』国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12939007

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