本書は、幕末~明治の植物学者・伊藤圭介の孫である植物学者・伊藤篤太郎が、母の小春(伊藤圭介の五女)に転写してもらった写本です。
尾張藩の家老を勤めた渡辺又日菴が天保12年(1841)頃から筆を取りはじめ、没する直前の明治3年(1870)まで描き続けられた図譜で、乾巻と坤巻の2冊からなります。この資料は、幕末に持ち込まれたさまざまな異国産の草花を記録しています。
新渡花葉圖譜の解題・抄録 渡辺又日菴(1792-1871)は、名が規綱(のりつな)、尾張藩の家老を勤めた。本書は天保12年(1841)頃から筆を取りはじめ、没する直前の明治3年(1870)まで描き続けられた。その大半が幕末期に渡来した外来園芸植物である。所収品数は147で、各品に当時の通称と、渡来年や尾張への移入年を記す。遣米・遣欧使節が持ち帰った種類はすでに詳細が知られているが、それとは別のルートで渡来した品が、グラジオラス(ナガルボーム)、アメリカナデシコ(ヱイケンラシヤ)、サンジソウ(メリケン柳草)、モミジアオイ(亜米利加産芙蓉)、ゼラニウム(天竺蜀葵)、ヒアシンス(フシヤシントウ)など、計36品も本書に初出する(括弧内は原記載名)ので、渡来植物資料として有用である。転写した伊藤小春は伊藤圭介の五女、圭介の後継者篤太郎の母で、画才があった。:『参考書誌研究』67号参照(磯野直秀)https://dl.ndl.go.jp/pid/2607706
乾
渡邉又日庵 撰『新渡花葉圖譜』,伊藤小春写,1914.
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2607706