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常緑の生命:青木



青木の実
青木の実

古来より、日本人は自然と深く結びつき、その豊かな恵みの中に美を見出し、文化を育んできました。草木は信仰の対象となり、文学や芸術に彩りを添え、人々の暮らしに寄り添ってきました。

本稿では、常緑樹である「アオキ」に焦点を当て、日本文化におけるその多様な表現と影響について探求してまいります。アオキは、その名の通り、一年を通して青々とした葉を茂らせ、冬の寒さにも負けず、鮮やかな赤い実を結びます。この生命力あふれる姿は、古くから人々の心を捉え、様々な形で文化に溶け込んできました。




アオキ:常緑の生命、その姿



アオキ (青木) は、ガリア科アオキ属に属する常緑低木です 。枝や葉は一年を通して緑色を保ち、冬には赤い実をつけることから、「青木」と名付けられました 。雌雄異株であり、雄株と雌株が存在します 。   


日本の本州 (宮城県以南)、伊豆七島、四国、九州、琉球列島、そして朝鮮半島に分布し 、暖温帯の森林に自生し、日陰でもよく育ちます 。葉は光沢があり、縁には荒い鋸歯が見られます 。   


アオキの近縁種には、ヒメアオキが存在します 。ヒメアオキは、北海道南部と本州の日本海側の多雪地帯に分布し、幹の下部が匍匐し、斜上して高さ1~1.5mになります。葉はアオキより一回り小さく、長さ7.5~16cm、幅2~4.5cmです。   


特徴

アオキ

ヒメアオキ

分布

本州(宮城県以西)、四国、九州、沖縄

北海道(南部)、本州(日本海側)

樹高

2~3m

1~1.5m

葉の大きさ

長さ8~25cm、幅2~12cm

長さ7.5~16cm、幅2~4.5cm

葉の縁

上半分に粗い鋸歯

先が尖った小さい鋸歯



庭園を彩るアオキ


アオキは、その常緑性と美しい赤い実から、古くから庭園や景観デザインに利用されてきました。

日陰でもよく育つ性質から、和風の庭園では木陰や建物の北側など、他の植物が育ちにくい場所に植えられることが多く 、その緑の葉と赤い実は、他の植物とのコントラストを生み出し、庭園に彩りを添えます。近年では、洋風の庭園やシェードガーデンにもアオキが取り入れられるようになっています 。特に、斑入りの品種は、洋風の雰囲気にもよく合い、日陰の庭を明るく彩ります。葉に斑が入ったものが好まれる傾向にあります 。   


品種

特徴

庭園での利用

本種のアオキ

濃緑一色の葉

昔ながらの和庭・坪庭

斑入りアオキ

濃緑色に黄色の斑入り

洋風の庭、シェードガーデン

ゴールドストライク

ほぼ全体が黄色の葉

日陰を明るくする

サルフレア

葉の外側が黄色の縁取り

明るくおしゃれな雰囲気

ピクチュラータ

葉の内側に黄色い模様

和洋どちらの庭にも合う


斑入り青木
斑入り青木

ピクチュラータ
ピクチュラータ



アオキを呼ぶ様々な名


アオキは、地域によって様々な方言や俗称で呼ばれています。例えば、「アオキバ」や「ヒロハノアオキ」、「ヤマタケ」などがあります 。これらの呼び名は、アオキの特徴や地域における利用方法などを反映していると考えられます。   




アオキ:人々を癒やす力


古くから、日本人は自然の恵みを生かし、様々な植物を薬用として利用してきました。アオキの葉もまた、民間薬として古くから利用されてきた植物の一つです 。   


一年を通して採取することができ 、薬用として利用する際は、新鮮な葉を火であぶって、やけどや腫れ物の外用薬として用います 。また、乾燥させた葉は、煎じて服用したり、浴湯料として用いられることもあります。生の葉をアルミホイルに包んでフライパンで炒り、薄皮を剥がして調製する方法も伝えられています 。   


アオキの葉には、抗炎症作用や解毒作用、止血作用などがあるとされ 、ひび、あかぎれ、腫れ物、やけど、切り傷、打ち身、痔、脱肛などの症状に効果があるとされています 。また、陀羅尼助などの胃腸薬にも配合されています 。   



終わりに


本稿では、日本文化におけるアオキの多様な表現と影響について考察いたしました。アオキは、その植物学的特徴から、生命力や繁栄の象徴として、古くから日本人に親しまれてきました。神話や伝説、文学や美術、庭園や景観デザイン、方言や俗称、薬用としての利用など、アオキは様々な形で日本文化に影響を与えてきたと言えるでしょう。





参考


アオキとは|育て方がわかる植物図鑑|みんなの趣味の園芸(NHK出版)


 森林総合研究所 九州支所/アオキ




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