『長楽花譜』は1841年に出版された雪割草(ミスミソウ)の園芸品種図鑑です。この図譜は以下の特徴を持っています。
桜渓主人の絵と阿部喜任(櫟斎)の序文で構成されている
69の異なる変異花が色彩豊かに描かれている
各変異株に優雅な雅名が付けられている
歴史的背景
江戸後期、雪割草は京や江戸で大変な人気を博していました。この図譜は、当時の園芸文化における雪割草の重要性を示す貴重な資料となっています。特に興味深いのは、描かれた変異株の多様性で、花の色や形の豊かな変化が詳細に記録されています。
残念ながら、これらの栽培品種の多くは第二次世界大戦中に失われたと考えられていましたが、後の研究で新潟の自然個体群の中に類似の変異株が存在することが報告されています。
著者
桜渓主人
『長楽花譜』の絵を描いた画人です。
本名や生没年は不明ですが、天保12年(1841年)以前に活動していたことがわかります。
雪割草(ミスミソウ)の69の変異花を色彩豊かに描き、各変異株に優雅な雅名をつけました。
阿部喜任(櫟斎)
江戸時代後期から幕末にかけて活躍した医師、本草学者です。
岩崎灌園、曽占春、東条琴台の門下生でした。
天保12年(1841年)春に『長楽花譜』の序文を記しました。
江戸幕府の小笠原諸島調査に参加し、帰府後は開成所に勤めました。
多くの著作があり、植物学や本草学に関する書物を多数執筆しています。
『長楽花譜』は、桜渓主人の絵と阿部喜任の序文によって構成された雪割草の園芸品種図鑑で、江戸後期の園芸文化における雪割草の重要性を示す貴重な資料となっています。
桜渓主人『長楽花譜』,写,文久4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2535640
参考
新潟県の雪割草(Hepatica)について 長島義介