艸花絵前集が生まれた時代 - 元禄年間の世情
艸花絵前集は元禄12年(1699年)に刊行されました。 元禄時代は、徳川綱吉による文治政治が行われていた時代で、元禄文化と呼ばれる町人文化が花開いた時期でもあります。経済が発展し、平和な世の中になったことで、人々は文化や芸術に目を向け、園芸を楽しむ余裕が生まれました。
しかし、当時の社会全体が豊かであったわけではありません。元禄時代は飢饉や災害も多く、農村部では厳しい状況も存在していました。 このような世相の中、都市部では文化的な発展が進み、園芸ブームが起こっていたことは興味深い対比を示しています。
艸花絵前集の基本情報
項目 | 内容 |
著者 | 伊藤伊兵衛三之丞(著) 政武(編) |
出版社 | 須原茂兵衛梓 松野屋宇右衛門版 |
出版年 | 元禄12年(1699年) |
艸花絵前集は、全3巻 (上・中・下) からなり、各巻に40品、計120品の草花を収録しています。 江戸前期に活躍した園芸家・伊藤伊兵衛三之丞が描いた草花の原画を、息子の政武が編集・刊行したものです。 伊藤伊兵衛は、園芸書「花壇地錦抄」の著者としても知られており、当時の園芸界に大きな影響を与えた人物です。 題は上・中・下巻とも「草花絵全書」ですが、一般に内題である「艸花絵前集」を書名として用います。
収録されている草花とその特徴
艸花絵前集には、当時の人々に愛された園芸植物120品が、美しい絵と解説とともに収録されています。 本書では、オシロイバナ、ルコウソウ、ヤブレガサなど、数多くの植物が初めて図解されました。 これは、当時の植物学の知識を広げ、新たな品種を栽培に導入する可能性を秘めており、園芸知識の発展に大きく貢献しました。
当時の園芸文化における位置付けと影響
艸花絵前集は、江戸時代の園芸文化において重要な位置を占める書物です。元禄時代の経済的繁栄と文化の隆盛は、町人階級の間で余暇活動として園芸への関心を高めました。 艸花絵前集は、美しい絵とわかりやすい解説によって、この傾向に応え、園芸をさらに普及させたと考えられます。
園芸の普及:美しい絵とわかりやすい解説は、多くの人々に園芸の魅力を伝え、その普及に貢献しました。
品種改良の促進:多様な草花を図解することで、品種改良への関心を高め、新たな品種の誕生を促しました。
園芸技術の向上:草花の栽培方法や管理方法に関する記述は、当時の園芸技術の向上に役立ちました。
艸花絵前集は、江戸前期の園芸文化を今に伝える貴重な資料です。美しい絵画と詳細な解説は、現代の私たちにも園芸の魅力を再認識させてくれます。また、当時の文化や社会を知る上でも重要な手がかりとなるでしょう。
本書には、オシロイバナ、ルコウソウ、ヤブレガサなど、初めて図解された植物も多く含まれており、植物学的な知識の普及にも貢献しました。また、元禄時代の文化的な潮流を反映し、園芸が人々の生活に浸透していく様子を垣間見ることができます。
艸花絵前集は、単なる園芸書を超えて、当時の社会や文化、そして人々の美意識を理解するための重要な資料と言えるでしょう。
上巻
[伊藤]伊兵衛 [画] ほか『艸花繪前集』[1],須原茂兵衛,元禄12 [1699]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2586993
中巻
[伊藤]伊兵衛 [画] ほか『艸花繪前集』[2],須原茂兵衛,元禄12 [1699]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2586994
下巻
[伊藤]伊兵衛 [画] ほか『艸花繪前集』[3],須原茂兵衛,元禄12 [1699].国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2586995
参考
艸花繪前集 - Cultural Japan