top of page

狩野山雪筆「老梅図襖」:力強い生命力と革新性

更新日:1月20日


狩野山雪筆「老梅図襖」

狩野山雪筆「老梅図襖」は、江戸時代初期に活躍した絵師、狩野山雪の代表作の一つです。その大胆な構図と力強い筆致は、見る者を圧倒し、今なお多くの人々を魅了し続けています。 本稿では、「老梅図襖」の魅力を、その画像、基本情報、画風の特徴、歴史的背景、類似作品との比較、そして見学場所といった多角的な視点から紐解いていきます。   




迫力ある「老梅図襖」の画像


「老梅図襖」は、その名の通り、老いた梅の木を描いた襖絵です。画面いっぱいに広がる梅の枝は、まるで生き物のようにうねり、力強く空間を支配しています。  その迫力ある姿は、見る者を圧倒し、深い感動を与えます。   


残念ながら、本稿では画像を表示することができませんが、インターネット上や美術書などで「老梅図襖」の画像を検索することができます。ぜひ、その目で確かめてみてください。例えば、キヤノンの「綴プロジェクト」では、高精細複製品の画像と共に、絵の特徴を紹介しています。  このプロジェクトは、最新のデジタル技術を駆使して、貴重な文化財を後世に残すことを目的としたものです。   



作品の基本情報

項目

内容

作者

狩野山雪 (1590-1651)

制作年代

1646年

寸法

全体(4面):縦174.6cm×横485.5cm

素材

紙本金地着色

所蔵

メトロポリタン美術館(アメリカ、ニューヨーク)

   


梅の木の生命力と山雪の革新性


「老梅図襖」は、画面全体に梅の枝がダイナミックに広がり、その中に岩や竹、遠景の山々が描かれています。  これは、伝統的な襖絵の構図とは一線を画すもので、山雪の革新的な画風を象徴しています。   


白梅が老いながらも力強く咲き誇る梅の姿は、生命力の象徴として描かれているのでしょう。 メトロポリタン美術館のウェブサイトでは、「爬虫類のような老梅は開花し、寒い早春の風情を伝えるとともに、誕生と再生を象徴している」と紹介されています。   


山雪の画風は、力強い筆致と大胆な構図、そして繊細な描写が特徴です。狩野派の伝統を受け継ぎながらも、独自の画風を確立しました。  「老梅図襖」においても、その特徴が遺憾なく発揮されています。特に、梅の老木は、まるで生きているかのような迫力を持って描かれており、山雪の卓越した技量を感じさせます。「老梅図襖」に見られるダイナミックな表現は、当時主流になりつつあった装飾的な画風とは対照的で、山雪の革新性を示すものと言えるでしょう。   




複雑な歴史を辿った「老梅図襖」


「老梅図襖」は、もともと京都の天球院という寺院の襖絵として、松平忠直の依頼により制作されました。 しかし、明治時代に寺院が破壊された際に、襖絵は民間に売却され、その後、アメリカに渡ったとされています。   


1880年代には、「老梅図襖」は損傷が激しく、家の寸法に合わせて上から切り取られてしまいました。  さらに、襖の裏側には、中国をテーマにした八人の道教の仙人を描いた別の絵があったのですが、これも「老梅図襖」から分離され、現在はミネアポリス美術館に所蔵されています。   


「老梅図襖」は、寺院の修復のために、日本の将来の財務大臣の民間人である片岡直丸に売却されました。  その後、1910年から1985年までは、日本美術商の日本橋重吉とアメリカ人コレクターのハリー・パッカードが所有し、最終的にメトロポリタン美術館に収蔵されました。   




美術史における「老梅図襖」


美術史的には、山雪の代表作として高く評価されており、江戸時代初期における革新的な画風の典型例として、しばしば挙げられます。  その大胆な構図と力強い筆致は、後の絵師たちに大きな影響を与えました。   



類似作品との比較検討


山雪は、多くの襖絵や屏風絵を残していますが、「老梅図襖」と類似する作品としては、「龍虎図襖」(妙心寺蔵)や「山水図襖」(個人蔵)などが挙げられます。これらの作品にも、「老梅図襖」と同様に、力強い筆致と大胆な構図が見られます。



「老梅図襖」を鑑賞するには


「老梅図襖」の実物は、メトロポリタン美術館で展示されています。  また、キヤノンの「綴プロジェクト」では、高精細な複製を制作し、天球院に寄贈しています。 天球院では、この複製を一般公開しているので、実物に近い形で「老梅図襖」を鑑賞することができます。   




結論


狩野山雪筆「老梅図襖」は、江戸時代初期の日本絵画を代表する傑作です。その力強い生命力と革新的な画風は、見る者を圧倒し、深い感動を与えます。

「老梅図襖」は、単なる絵画作品ではなく、時代の変遷を乗り越えてきた歴史の証人でもあります。寺院の襖絵として制作され、破壊、売却、修復といった様々な出来事を経験しながら、現代にその姿を伝えています。

老木が厳しい冬を耐え、再び花を咲かせるように、山雪自身も波乱万丈の人生を送りながらも、力強い作品を生み出し続けました。  「老梅図襖」に描かれた梅の生命力は、山雪の不屈の精神と創造性を象徴していると言えるでしょう。   


ぜひ、実物または高精細な複製を鑑賞し、山雪の芸術と、そこに込められた力強いメッセージに触れてみてください。





狩野山雪筆「老梅図襖」
Title: Old Plum Artist: Kano Sansetsu (Japanese, 1590–1651) Period: Edo period (1615–1868) Date: 1646 Culture: Japan Medium: Four sliding-door panels (fusuma); ink, color, gold, and gold leaf on paper Dimensions: Overall (of all four panels): 68 3/4 x 191 1/8 in. (174.6 x 485.5 cm)Overall (a): 68 3/8 x 47 5/8 in. (173.7 x 121 cm)Overall (b): 68 3/8 x 48 3/4 in. (173.7 x 123.8 cm)Overall (c): 68 1/2 x 47 3/4 in. (174 x 121.3 cm)Overall (d): 68 1/2 x 47 3/4 in. (174 x 121.3 cm) Classification: Paintings Credit Line: The Harry G. C. Packard Collection of Asian Art, Gift of Harry G. C. Packard, and Purchase, Fletcher, Rogers, Harris Brisbane Dick, and Louis V. Bell Funds, Joseph Pulitzer Bequest, and The Annenberg Fund Inc. Gift, 1975 Accession Number: 1975.268.48a–d https://www.metmuseum.org/art/collection/search/44858



参考


綴プロジェクト作品(高精細複製品)「老梅図襖」 狩野山雪 筆 - Canon Global


老梅図 - 狩野山雪 - FeelTheArt


《連載》メトロポリタン美術館の日本美術 狩野山雪〈老梅図襖 - ANTIQU〉








bottom of page