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増山雪園筆 四季花鳥画帖

増山雪園について


増山雪園(1785-1842)は、江戸時代後期の伊勢長島藩の第6代藩主です。諱は正寧。父は、文人大名として知られる増山雪斎(正賢)です。 雪園自身も父の影響を受け、幼い頃から書画や漢詩に親しみ、沈南蘋風の花鳥画を得意としました。 漢詩の才能は、菊池五山の『五山堂詩話』に作品が収められていることからも伺えます。 藩政においては、儒学者の中島作十郎らを招聘し、藩士子弟の教育に力を入れたほか、文治政治にも尽力しました。 文政5年(1822年)には、幕府の若年寄に任じられています。   


雪園は、文化人としての教養も高く、多くの文化人と交流がありました。 父・雪斎は、書画だけでなく、囲碁や煎茶など文人が嗜む芸事にも通じていました。 雪園もこうした父の姿を見て育ち、多岐にわたる文化への関心を育んだのでしょう。しかし、雪園は9人の息子全員に先立たれるなど、度重なる水害で藩が大きな損害を被るなど、不幸にも見舞われました。   



四季花鳥画帖について


作品の基本情報


増山雪園筆「四季花鳥画帖」は、江戸時代・天保11年(1840)に制作された、絹本着色・墨書の画帖です。 各帖の色紙寸法は29.6×29.9cmで、全4帖から成ります。  この作品は、東京国立博物館に所蔵されています。   


作品の主題と技法


「四季花鳥画帖」は、その名の通り、四季折々の花鳥を描いた作品です。 例えば、梅の花と雪景色、水仙などが描かれています。 雪園は、父・雪斎と同じく沈南蘋風の花鳥画を得意としており、 本作においても、写実的な描写と華麗な色彩表現が特徴です。  繊細な筆致で花や鳥の姿態を生き生きと描き出しており、雪園の高い画技が窺えます。   


作品の評価と美術史における位置付け


増山雪園の作品は、現存数が少ないため、美術史における位置付けや評価が確立されているとは言えません。 しかし、父・雪斎譲りの精緻な画風は高く評価されており、  今後、研究が進むことで、その真価がさらに明らかになることが期待されます。   


雪園の作風は、写実性と装飾性を兼ね備えている点が特徴です。 これは、彼が藩主という高い社会的地位にあったこと、そして江戸時代後期の文化的な風潮が影響していると考えられます。 当時の関東画壇では、様々な流派の技法を組み合わせる「諸派兼学」という傾向が見られましたが、 雪園の作品も、そうした時代の流れを反映していると言えるでしょう。   


増山雪園の他の作品との比較


増山雪園の作品は、現存数が少ないため、他の作品との比較が難しいのが現状です。  「雁図」や「孔雀図」などの作品が知られていますが、いずれも数少ない貴重な作品です。 ここでは、父である増山雪斎の作品との比較を通して、雪園の画風の特色や共通点を探ってみましょう。   


雪斎は、沈南蘋風の花鳥画や文人画風の山水画など、幅広いジャンルの作品を残しています。 特に、虫類を精密に描いた博物図譜である「虫豸帖」(東京国立博物館蔵)は、雪斎の代表作として知られています。 雪園の「四季花鳥画帖」も、雪斎の作品と同様に、写実的な描写と繊細な筆致が特徴です。   


しかし、雪園の作品は、雪斎の作品に比べると、より装飾性が高く、華麗な色彩表現が用いられている点が特徴と言えるかもしれません。  これは、雪園が藩主という立場であったこと、また、江戸時代後期の文化的な風潮が影響していると考えられます。   



結論


増山雪園筆「四季花鳥画帖」は、江戸時代後期の文人大名である雪園の画才を示す貴重な作品です。  繊細な筆致で描かれた四季折々の花鳥は、見る者に自然の美しさ、そして生命の力強さを伝えてくれます。  現存する雪園の作品は少ないですが、 本作を通して、雪園の芸術性、ひいては江戸時代後期の文化、そして多様な画風の融合という当時の関東画壇の潮流の一端に触れることができるでしょう。




楊柳風


作者:増山雪園筆 時代世紀:江戸時代・天保11年(1840) 品質形状:絹本着色及墨書

法量:色紙寸法各29.6×29.9 所蔵者:東京国立博物館 https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10086?locale=ja





梧桐月


作者:増山雪園筆 時代世紀:江戸時代・天保11年(1840) 品質形状:絹本着色及墨書

法量:色紙寸法各29.6×29.9 所蔵者:東京国立博物館 https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10086?locale=ja





芭蕉雨


作者:増山雪園筆 時代世紀:江戸時代・天保11年(1840) 品質形状:絹本着色及墨書

法量:色紙寸法各29.6×29.9 所蔵者:東京国立博物館 https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10086?locale=ja





梅花雪


作者:増山雪園筆 時代世紀:江戸時代・天保11年(1840) 品質形状:絹本着色及墨書

法量:色紙寸法各29.6×29.9 所蔵者:東京国立博物館 https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10086?locale=ja







参考  



増山雪斎の中国趣味 - 三重の文化


四季花鳥画帖 - 文化遺産オンライン


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